八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百四十三話 古典であるものその六
「アルゼンチンは日系人を守ったんだ」
「ペタン政権がだね」
「そうしたんだ」
「その話ははじめて聞いたよ」
「そうだったんだね、君も」
「うん、しかし」
僕はあらためて思った、今度はペタン政権についてだ。
「あの政権って独裁者としてね」
「評判悪いんだ」
「日本ではね」
奥さんのエビータという人が贅沢三昧だったこともだ。
「そうだったけれど」
「いや、あの頃結構アルゼンチンよかったし」
「そうだったんだ」
「それで日系人にもね」
「守ったんだ」
「そうしたこともあったんだ」
「いいお話だね」
「僕はそのお話を知って」
それでというのだ。
「日本にも興味を持ったんだ」
「そうだったんだ」
「それで親戚が八条グループの企業で働いていて」
その縁でというのだ。
「それでね」
「留学を志願してなんだ」
「ここにいるんだ」
「成程ね」
「それで演歌も聴いているんだ」
今ここでというのだ。
「そうしているんだ」
「そういうことがあったんだね」
「そうだよ、ただ僕は歌わないから」
クーラ君自身はというのだ。
「しないから」
「そうなんだ」
「そう、それはね」
どうしてもというのだ。
「軽音楽部にはいないからね」
「これは軽音楽部の活動だからだね」
「そうなんだ、だからね」
それでというのだ。
「聴いているだけだよ」
「そうなんだね」
「それとね」
「それと?」
「いや、君もアルゼンチンと日系人のお話知らなかったんだね」
「中南米に日系人の人いることは知ってたよ」
僕にしてもだ。
「それでもね」
「そうだったんだ」
「いいお話だね」
「若し自分が敵国にルーツがあるだけで収容所に入れられたら」
クーラ君は僕に苦い顔で話した。
「これ以上最悪なことはないよ」
「そうだよね、当時の日系人の人達は大変だったね」
「というかその国の為に何かするか」
そうしたことはというのだ。
「絶対にないね」
「自分を守らないどころかね」
「迫害するなら」
それならだ。
「もうね」
「やる価値はないね」
「そう、だから」
それでというのだ。
「もうその国にはね」
「何もしないね」
「国籍が敵国のままならともかく」
「国籍がその国でね」
「しかも二世三世でそうしたことされるなら」
その国で生まれ育っていてもだ。
「もうね」
「そんな国にはね」
「何かしようとか」
それこそというのだ。
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