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夢幻水滸伝

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第百八話 低い山なれどその六

「ほんまに」
「その通りだ」
「やっぱりそうですね」
「それと」
 ここでだった、ベッシーはリザードマンの男二人連れの観光客を見て吉川に対してこんなことを言った。
「こちらの世界でも日本では」
「何だ」
「同性愛は」
「何でもない」
 吉川はベッシーに即座に答えた。
「法律的にもな」
「宗教的にもですね」
「私は違うし私の周りにもいないが」
「女性同士も」
「そちらはわからないが」
 しかしとだ、吉川はベッシーに答えた。
「別にだ」
「否定されていないですか」
「否定されるものか」
 吉川は硬い顔だが少し怪訝なものを入れてベッシーに返した。
「そもそも」
「キリスト教では。こちらの世界ではあえて無視している感じですが」
「他宗教との共存の中でな」
 他にも無視しているものがあるがこれはどの宗教でもだ、あらゆる宗教が混在している世界なのでそうして共存に折り合いをつけているのだ。
「そうしているな」
「むしろ内密でも」
「楽しんでいたりする」
 キリスト教徒でもというのだ。
「そうした主義ということでな」
「そうですね」
「こちらの世界でも否定する空気は確かに存在するがな」
「ですが日本では」
「趣味でなくても犯罪か」
 そもそもというのだった。
「そして教理に反するか」
「法でも教でもですね」
「どちらでもな」
「それが日本の考えですね」
「そうだ、日本ではだ」
 吉川はさらに話した。
「それは一切ない」
「そうなのですね」
「だから君が今見た二人が若しそうでもな」
「咎めることはないですね」
「松尾芭蕉もそうだったらしい」
「あの有名な俳人も」
 江戸時代前期に活動した、伊賀出身であることから実は忍の者であったのではないかという説も存在している。
「そうだったのですか」
「男二人の旅だったな」
「そういえば」
 アグアルーザも言われて気付いた。
「あの人はそうでしたね」
「友人や弟子と言われているが」
「その実は」
「恋人だったと言われている」
「織田信長さんのお話は聞きましたが」
 アグアルーザは日本の歴史の教科書で知ったのだ、この人物のことを。
「あの人もまた」
「若い頃からそれぞれいた」
「そうしたお相手が」
「死ぬまでな」
 前田利家から蒲生氏郷、そして森蘭丸とそれぞれ時代によって違ってはいる。
「そうだった」
「そうでしたか」
「武田信玄や上杉謙信、伊達政宗もそうだったしな」
「戦国大名にも多かったのですね」
「江戸時代の将軍なら徳川綱吉もだ」
 犬公方と言われるこの人物もというのだ、生類憐みの令で評判が悪いが実はこの法で死罪になった者は一人か二人しかおらず江戸近辺で施行されたに過ぎない。しかも農民や町人には多分に緩やかであった。むしろ元禄の繁栄をもたらし学問や能を愛した将軍として再評価されるべきかも知れない人物であろうか。 
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