戦国異伝供書
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第五十八話 出家その三
出家して信玄という僧としての名を授かりすぐに戦に動いていた。この時の信玄の読みは当たっていて。
輝虎も決意してだ、家臣達に言った。
「出家するとしましょう」
「殿はですか」
「そうされますか」
「はい、これよりです」
こう言うのだった。
「武田家との戦に入りますが」
「公方様にもお約束しましたし」
「それで、ですね」
「遂にですね」
「信濃の過ちをあらためる」
「その戦を起こすので」
「今度こそです」
輝虎は家臣達に強い声で告げた。
「武田殿過ちを正すので」
「決着をつけますね」
ここで直江が言ってきた。
「この度の戦で」
「はい、何としても」
「それで、ですか」
「わたくしは決意しましたので」
信濃を幕府が定めた姿に戻すことをというのだ。
「ですから」
「それ故に」
「身も心も清めことに向かう為に」
「出家されて」
「そしてです」
そのうえでというのだ。
「ことに挑みたいのです」
「だからこその出家ですね」
「そうです、そなた達はどう思いますか」
主の座からだ、輝虎は家臣達に問うた。
「一体」
「殿がそう思われるなら」
「それならばです」
「我等に異存はありませぬ」
「殿の思われるままに」
「そうですか、ではです」
家臣達に反対はなかった、それを見てだった。
輝虎は正式に出家することにした、それでだった。
彼はすぐに出家し入道した際の名も授かった、謙信という名を授かり黒い頭巾を被って言うのだった。
「以後も毘沙門天と正義を信じて」
「そうしてですな」
「天下、公の為に働く」
「そうされるのですな」
「そうしていきます、ではこれよりです」
強い声は変わらなかった、それで言うのだった。
「信濃に入る用意をしましょう」
「わかり申した」
「それではです」
「これよりそれに入らせて頂きます」
「頼みます、それとですが」
ここで謙信はこうしたことも話した。
「わたくしは妻がおらず子もいません」
「だからですか」
「この度ですか」
「世継ぎを定めます」
自分の後に上杉家の主になる者をというのだ。
「長尾六郎殿の嫡男卯松殿をわたくしの養子とし」
「上杉家の跡継ぎとされる」
「そうお決めになられたのですか」
「長い間考えていましたが」
謙信は自身の胸の内も語った。
「ここでそなた達に伝えます」
「左様ですか」
「では、ですな」
「以降は」
「卯松様を後継者とされて」
「育てられますか」
「はい」
実際にと言うのだった。
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