戦国異伝供書
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第五十七話 善徳寺の会盟その三
「確か仙人とも妖術使いとも」
「言われていますな」
「わしもよく知らぬが」
「とかく色々言われている御仁で」
「謎が多いな」
「はい、二百年生きておられるともです」
「では仙人か」
「それがそれがしにもです」
幸村にもというのだ。
「わからず」
「その素性は知れぬか」
「はい、どうも。ですが」
それでもというのだ。
「忍術もかなりで」
「その飛騨者達はじゃな」
「はい、育てられ」
そしてというのだ。
「かなりの使い手だとか」
「そうなのじゃな」
「十勇士達にもです」
「そしてお主にもじゃな」
晴信は真剣な顔で幸村に言った。
「負けぬ」
「それがしも武芸に励んでいますが」
「それでもじゃな」
「あの者達に勝てるかどうか」
それはというのだ。
「わかりませぬ」
「そこまでの者達か」
「はい、ですから」
それ故にというのだ。
「あの者達が当家につけばいいのですが」
「他の家に入られるとか」
「厄介かと」
「飛騨ですが」
山本がこの国について晴信に話した。
「信濃と境を接してはいますが」
「山であるからのう」
「それも険しい」
そうした山に阻まれてというのだ。
「大軍も向けにくく」
「ほぼ無理じゃな」
「攻めるとすれば越中か美濃か」
こうした国々からだというのだ。
「どちらからか」
「ですがどちらから攻めても」
そうしてもとだ、山本は主に話した。
「あの国はやはり」
「山に囲まれておる、いや国全体が山じゃ」
「そうした国で」
山本はさらに話した。
「しかも土地が」
「木は多いがな」
「それを売って財には出来ますが」
それでもというのだ。
「米は甲斐より遥かに採れず」
「麦もじゃな」
「まともな田畑がです」
それ自体がというのだ。
「ありませぬ」
「そうした国だからのう」
「はい、ですから」
「それでというのだ。
「あの国は」
「手に入れてもじゃな」
「これといって利がないです、あちらから降ればいいですが」
飛騨を治める三木氏からというのだ。
「そうでなければです」
「放っておくべきか」
「少なくとも今はです」
「上杉家とのこともあるしのう」
「何といっても上洛のことがあるので」
だからだというのだ。
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