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戦国異伝供書

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第五十七話 善徳寺の会盟その二

「目立ってしまっては」
「忍の者としてな」
「忍は隠れる者」
「そうじゃな」
「風の様に駆け」
「林の様にじゃな」
「静かになり」
 そしてというのだ。
「隠れる時はです」
「影じゃな」
「その様に隠れるもので」
 だからだというのだ。
「やはりです」
「目立ってはな」
「意味がありませぬ」
 決してというのだ。
「ですから」
「それでじゃな」
「はい、風魔殿も」
「大柄であってもじゃな」
「顔中髭だらけで牙もあるなぞと」
 それこそというのだ。
「鬼の様なです」
「姿では目立つのう」
「はい、確かに十勇士達も目立ちますが」
 見れば十人共かなりのものだ、さながら傾奇者である。
「しかし」
「化けることも出来てじゃな」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「忍の者なのです」
「そういうことじゃな、この者達も」
「化けることも得意ですし」
 十勇士達はただ強いだけではないのだ、化けることも出来るのだ。そして隠れることも出来るのだ。
 それでだ、幸村も晴信に言うのだ。
「だから十勇士なのです」
「忍としても優れておるからじゃな」
「皆天下一の忍達ですぞ」
 幸村は十勇士達を見つつ晴信に笑顔で話した。
「まさに天下無双の」
「十人共じゃな」
「左様です、武芸もさることながら」
「忍術もじゃな」
「天下に並ぶ者がおりませぬ」 
 それこそ全員がというのだ。
「文字通りに。ですから」
「この者達はじゃな」
「はい、十勇士なのです」
「お主が宝とする最高の家臣達じゃ」
「義兄弟であり友でもある」
 幸村にとって彼等はそうでもあるのだ、ただの主従ではないのだ。
「その者達なのです」
「お主にとってそこまで大きいな」
「まさに、そして」
 幸村はさらに話した。
「風魔殿はです」
「忍の者としてじゃな」
「それがし達、そして伊賀の服部殿にもです」
「肩を並べるまでか」
「そして飛騨者達も」
「そういえば」
 飛騨者と聞いてだった、山本が述べた。
「飛騨に果心居士殿の弟子の」
「はい、かなり風変わりですが」
「一騎当千の忍達がおるというな」
「その者達もです」
「天下屈指の忍達か」
「左様でありまして」
 幸村は山本にも話した。
「随分と強いとか」
「果心居士とな」
 晴信はその名前に反応して述べた。 
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