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戦国異伝供書

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第五十六話 高僧の言葉その二

「すぐにです」
「あの城を攻め落としてでおじゃるな」
「都への道を確かにしましょう」
「武田殿が入る前にでおじゃるな」
「是非。ただこうしたことは」
「やはりでおじゃる」
「三家の盟約です」
 これを確かにしてというのだ。
「そうしましょう、武田殿と北条殿に働きかけて」
「そしてそのことは」
「拙僧に任せて頂くのですな」
「和上の言うことと行いに間違いはないでおじゃる」
 微笑んでだ、義元は雪斎に答えた。
「だからでおじゃる」
「この度のことは」
「任せるでおじゃる」
 その全てをというのだ。
「頼んだでおじゃる」
「それでは」
 雪斎も応えてだ、そのうえで動きはじめた。彼はすぐに武田家と北条家に人をやった。使者を送ってからだった。
 雪斎は元康に笑って話した。
「よいか竹千代、戦よりもな」
「政であってですな」
「それは内も外もあってな」
「内は国を富ませ」
「そして外はな」
「この様にですな」
「戦をする相手は少なくしてな」
 そうしてというのだ。
「他の家とはじゃ」
「結ぶのがよいのですな」
「戦ばかりしてよいことはない」
 元康にこうも言うのだった。
「だから戦をする家以外とはな」
「出来るだけ手を結ぶのですな」
「そうじゃ、だからこの度もじゃ」
「武田殿、北条殿と手を結ぶ」
「しかもじゃ」
「姫様をですか」
「輿入りしてもらってな」
 そうしてというのだ。
「かなり強い盟約にする」
「そうするのですな」
「ただの口約束では破りやすい」
 それならというのだ。
「文のそれでもな、しかしな」
「婚姻を結べば」
「血のつながりが出来るからな」
 そうなるからだというのだ。
「その結び付きはじゃ」
「より強くなる」
「だからじゃ、盟約はな」
「輿入れがですか」
「大事じゃ、ただな」
「ただ、ですか」
「若し姫様がおられないとな」
 この場合のこともだ、雪斎は話した。
「どうするかじゃ」
「その時は」
「血縁か家臣のどなたかからな」
「わかりました、姫様を養女にして」
 元康は雪斎に明るい顔で答えた。
「そうして殿の姫様にして」
「うむ、そのうえでじゃ」
「輿入れしていいですな」
「そうじゃ」
「左様ですな」
「見事じゃ、すぐにわかるとはな」
 それこそとだ、雪斎は元康に笑みで応えた。
「流石であるな」
「お褒め戴き嬉しい限りです」
「相変わらず筋がよいのう」
「いえ、たまたまです」
「その謙遜もよい、お主は間違いなくじゃ」
 雪斎は元康に笑みを浮かべてそうして話した。 
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