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戦国異伝供書

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第五十六話 高僧の言葉その一

               第五十六話  高僧の言葉
 義元はこの時雪斎の言葉を聞いていた、そのうえで彼にこう言った。
「では、でおじゃるな」
「はい、尾張に兵を進める前に」
 是非にとだ、雪斎は義元も答えて述べた。
「是非です」
「武田家、北条家とでおじゃるな」
「強い盟約を結び」
 そうしてというのだ。
「後顧の憂いをなくしましょうぞ」
「三つの家で、おじゃるな」
「そしてです」
 そうしてというのだ。
「その盟約として」
「互いの姫をでおじゃるな」
「輿入れをして」
「そうしてでおじゃるな」
「盟約を強いものにしましょうぞ」
「麿は尾張は何でもないと思っているでおじゃる」
 そこにいる信長はというのだ。
「大うつけ殿でおじゃる」
「あの御仁は」
「和上は竹千代は違うと言うでおじゃるが」
 それでもというのだ。
「麿はそう思っているでおじゃる、だからこそ」
「尾張入りは」
「簡単に終わってでおじゃる」
 そしてというのだ。
「尾張六十万石と都への道は楽に手に入るでおじゃる」
「そうであればいいですが」
「まあ織田吉法師の首は取らずに降らせ」
 信長を侮ってはいる、だが決して義元は血を好む者ではない。雪斎の教えを受けただけあり流れる血は最低限であればよしと思っている。
 だからだ、信長も敵であってもというのだ。
「麿の家臣にするでおじゃる」
「はい、ですがあの御仁は家臣にしましても」
「重くでおじゃるな」
「用いて」
 そうしてというのだ、
「竹千代と共に」
「和上の後釜にもなる様な」
「当家の柱とされて下さい」
「和上がそう言うなら」
 信長はうつけだと思っている、だが自身の師であり絶対の信頼を置いている彼の言葉ならとだ。義元も頷いて述べた。
「ではでおじゃる」
「この度は」
「織田吉法師も用いるでおじゃる」
「そうして下さい、そして」
「その前にでおじゃるな」
「是非です」
 武田家、北条家とというのだ。
「幸い両家に恩を売れましたし」
「どちらも上杉家が絡んでるでおじゃるな」
 義元は輝虎の話もした。
「あの御仁が北条殿と武田殿を攻めて」
「我等は援軍を出し仲裁をして」
「恩を売れたでおじゃるな」
「これをてこにして」
 その様にしてというのだ。
「是非です」
「三家で確かな盟約を結びそうして」
「尾張を攻めそこから」
「美濃でおじゃるな」
「美濃は」
「稲葉山城でおじゃるな」
「あの城はです」
 どうかとだ、雪斎は義元に話した。
「天下の堅城ですので」
「尾張以上にでおじゃるな」
「攻め落とせませぬ、そして」
 雪斎はさらに言った。
「武田殿もです」
「美濃を狙っているでおじゃるな」
「拙僧も知恵を働かせます」
「そうしてでおじゃるな」
「尾張を手に入れましたなら」
 そこからというのだ。 
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