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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百四十話 二重奏その四

が出来るなんてどう考えても普通ではない。
「それで歌劇の数もです」
「かなりですよね」
「私はピアノで歌劇の曲も演奏していますが」
「モーツァルトもですか」
「はい、そしてモーツァルトはピアノの曲も」
 こちらもというのだ。
「かなりです」
「多いですか」
「しかも名曲ばかりです」
「モーツァルトに駄作なしですか」
「そこが余計に凄いのです」
 歌劇ではここに端役なしとも言われる、モーツァルトの天才と博愛精神は全ての登場人物に重唱等で素晴らしい音楽を与えているのだ。
「私は今回モーツァルトは演奏しませんが」
「コンサートではですね」
「二年生の娘が演奏します」
「そうなんですか」
「そしてベートーベンの曲も」
「演奏されるんですね」
「義和さんは確か」
 スマホの向こうで早百合さんが考える顔になっているのがここでわかった、声がそんな調子だからだ。
「ベートーベンもお好きですね」
「はい、伝記読んだこともあります」
 小学生の時のことだ。
「何ていうか凄い人ですね」
「可哀想なところもありましたね」
「今で言うコミュ障害だったんでしょうか」
「そうだったかも知れないですね」
 早百合さんも同感みたいだった。
「何しろかなり頑固で」
「頑迷って言っていい位だったそうですね」
 だから納得してもらうことに人はかなり苦労したらしい。
「しかも尊大で気難しくて」
「短気だったそうですね」
「癇癪持ちだったんですね」
「尚且つ異常にこだわりが強かったです」
 朝のコーヒーの豆の数をわざわざ数えてナポレオンが皇帝になって激怒してだ。
「それですぐに人と衝突しました」
「そういう人ならすぐに衝突しますね」
「ワーグナーも敵が多かったですが」
 借金を踏み倒して恩人の奥さんと不倫して弟子の奥さんを奪って尊大で図々しくて今で言う自作自演の様なことを新聞に投書したりしていた、これでは敵が多いのも当然だ。
「ベートーベンもです」
「敵が多かったんですよね」
「結局家庭を持てませんでした」
 甥御さんを養子にしていたらしい。
「そうした人でした」
「そうでしたね」
「ですが音楽は素晴らしく」
 尚決して意地悪ではなく真面目で清廉潔白だったので慕う人には慕われていたらしい。
「ピアノの曲もです」
「数多く残していますね」
「はい、それで今回のコンサートでは」
「ベートーベンのピアノの曲もですね」
「演奏されますので」
「色々楽しめますね」
「はい、そして私はショパンを」
 この人の曲をというのだ。
「演奏させて頂きます」
「わかりました、じゃあ今から」
「来てくれますね」
「そうさせてもらいます」
「お待ちしています」
 これが早百合さんの返事だった、そしてだった。 
 僕は第一校舎の地下に向かった、そこにはすぐに着いた。ここは芸術鑑賞用のコンサートホールになっている。
 そのホールに入るともう結構な人が来ていた、見ればお隣には歌劇部のコンサートの時にいた人達がいた。
 それでここでもだ、あれこれと和していた。
「ショパン聴けるんだな」
「しかもピアノ部のエースの演奏か」
「これは楽しめるな」
「ああ、ピアノはショパンだよ」
 本当に今回も同じ話をしていた。 
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