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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百三十九話 二重唱その一

               第二百三十九話  二重唱
 僕は今度は何処に行こうかと思った、するとだった。
 横の壁のポスターが目に入った、そこにだった。
 歌劇部のコンサートが開かれると書いてあった、合唱部も一緒だった。その開始時間を見てだった。
 丁度よかった、それで開催場の歌劇場に向かった。
 そこに入るとだ、裕子さんが入り口にいて僕に言ってきた。
「あら、来たの」
「あっ、裕子さんもですか」
「歌うわよ」
 僕ににこりと笑って答えてくれた。
「さっきも歌ったけれど」
「これからもですか」
「歌うわ。歌う曲もね」
 それもというのだ。
「決まってるの」
「何を歌われるんですか?」
「さくらんぼの二重唱よ」
 僕に笑顔で歌う曲の名前も話してくれた。
「それをね」
「二重唱ですか」
「そう、今度は一人じゃないの」
「そうなんですか」
「さっきは歌に生き愛に生きを歌ったけれど」
「トスカの曲ですね」
「あの曲歌わせてもらったの」
「あの曲有名ですよね」
 僕はこう裕子さんに言った。
「歌劇の中でも」
「そう、ソプラノの歌の中でもね」
「特に有名で」
「あの曲を歌わせてもらったの」
 僕ににこりとして話してくれた。
「有り難いことに」
「本当によかったですね」
「それでね」
「後で、ですか」
「これからはじまる公演では」
 それではというのだ。
「今度はね」
「二重唱ですね」
「さくらんぼね」
「確か」
 その歌のタイトルからだ、僕は言った。
「マスカーニの友人フリッツの」
「その歌劇の曲よ」
「そうでしたね」
「テノールとソプラノの」
 つまり裕子さんの声域のだ。
「歌なのよ」
「僕その曲一度聴いたことがあります」
「いい曲でしょ」
「歌劇は聴いたことないですが」
 舞台で観たこともない。
「ですが」
「その曲をね」
「これからですか」
「歌うの」
「楽しみですね、一回だけしか聴いてないですが」
 このことは事実でもだ。
「奇麗で優しいいい曲ですね」
「ええ。マスカーニはそうした音楽も得意だったから」
 友人フリッツの作曲者だ、代表作はカヴァレリア=ルスティカーナでこの学園の歌劇場でもよく上演される。
「名曲なのよ」
「そうですよね」
「あの人は凄い才能があった人で」
「素晴らしい曲を結構残してますね」
「その曲の一つがね」
「さくらんぼの二重唱ですね」
「そうよ」
 裕子さんは僕ににこりとして話してくれた。
「だからね」
「これからですね」
「二人で歌うから」
「それでその歌をですね」
「聴いてね」
「そうさせてもらいます」
「他の歌劇部や合唱部の子達も歌うから」
 それでというのだ。 
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