八条学園騒動記
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第五百二十四話 先生のお見合いその二
「見せて頂けるでしょうか」
「写真をですか」
「はい」
まさにというのだ。
「一度」
「そうでしたね、まだでしたね」
教頭も言われて気付いた、そしてだった。
そのうえでだ、教師らしく大人しいダークグリーンの色のスーツのポケットから一枚の写真を取り出した、その写真には知的な顔立ちで眼鏡が似合う整った金髪に明るい緑の目のすらりとした男がいた。
その彼の写真を見せてだ、教頭はマリアに話した。
「彼です」
「この人は博物館で」
「お見掛けしましたね」
「はい、擦れ違い程度でしたが」
博物館の中でというのだ。
「あります」
「そうでしたか」
「私も時々博物館に行きますので」
八条学園の中にあるそこにというのだ、他には美術館や動物園、鉄道博物館、図書館、植物園、水族館があるが全て学園関係者は無料で入られる。
そのこともあってだ、マリアは博物館にも時々通っているのだ。
「それで、です」
「彼ともですね」
「擦れ違いで」
その形でというのだ。
「有り難くです」
「お会いしてですか」
「意気投合されれば」
その時はというのだ。
「そう思いますが」
「結婚ですか」
マリアはお見合いの先のことをだ、ここで考えた。
そしてだ、こうも言ったのだった。
「実はこれまで」
「お考えになったことはですね」
「なかったです」
「そうでしたか」
「ですが考えてみれば」
お見合いの話が出て、というのだ。
「私もですね」
「もうそろそろですよね」
「そんな年齢ですね」
「結婚されて」
そしてとだ、教頭はマリアに話した。
「お子さんが何人もおられると」
「それで、ですね」
「いいことがよくありますし」
「そうですね、子供が多いと」
「連合の中央政府と各国政府が福利厚生でサービスをしてくれるので」
連合それぞれの政府が多産推奨の為に行っている政策だ、これで連合は人口面からも国力を拡大させていっているのだ。
「ですから」
「それで、ですね」
「お子さんはです」
「多くですね」
「もうければ」
それでというのだ。
「それだけいいので」
「結婚すればですね」
「はい、お子さんはです」
「一人でも多くもうけるべきですね」
「そうされて下さい」
「そうですか、ただ」
ここでだ、マリアは教頭に笑って答えた。
「お見合いもまだ」
「はい、どうするかですね」
「それは決まっていないので」
それでというのだ。
「ですから」
「それで、ですね」
「今ここでお返事をでしょうか」
「いえ、それは」
教頭はこうマリアに答えた。
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