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仗助にもしも双子の姉がいたら?ネタ

作者:蜜柑ブタ
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虹村兄弟 その2 side:仗助

 
前書き
ミナミの視点だけで話を書く予定が、仗助サイドも書いてた。

っというか、ミナミが前回錯乱したため、彼女の視点じゃ書けなかったんです。



虹村兄弟の、父親が……。


注意!! 

 


 姉ちゃんの悲鳴と同時に崩壊寸前の部屋のあちこちどころか、瓦礫からもあの根っこみたいなスタンドが現れやがった。
 四方八方どころじゃねぇ! もう部屋を埋め尽くす勢いじゃねぇか! アンジェロの時の比じゃじゃねぇ!
 形兆の野郎が急に俺達を残して部屋に空いた穴から飛び出そうとして根っこに捕まりかけた。その時に傷を付けられたのか、赤い茎の青いバラの花が何本か落ちた。
「じょ、仗助君!? これは、いったいなに!?」
「姉ちゃんのスタンドだ…。」
「これもスタンドなの!? 僕ら包囲されてない!? あっ! 根っこがアイツを追いかけて…。」
 赤い根っこどもは、ウネウネしゅるしゅると動きながら形兆の野郎を追いかけるように壁の穴に広がっていった。
 あの野郎…、姉ちゃんのスタンドに用があるだのなんだの言いやがって…、いざ発動させたら逃げただぁ? これは何かある!
「康一、動けるか?」
「どどどど、どうするの?」
「根っこの肥やしにされたくなかったら逃げっぞ!」
「でもミナミさんが!」

「おい! こりゃどうしたんだ!」

「億泰! ちょうど良いところに!」
「なんだよ、この根っこみたいなの!? これが、おめぇの姉ちゃんのスタンドって奴か!? 兄貴が求めてた…スタンドなのか!?」
「億泰! ザ・ハンドで姉ちゃんをこっちに引き寄せてくれ!」
「やべぇ…。この根っこ、なにか凄まじくヤベェもんを感じるぜ! 逃げねぇと!」
「早くしろって言ってんだろ!」
「あ、ああ…!」
 嫌な予感に臆してやがる億泰をひっつかんで、ザ・ハンドを使わせて姉ちゃんを引き寄せた。
「姉ちゃん! 姉ちゃん、しっかりしろ!」
「いや…、いや、いや、いやぁぁぁぁあああ!!」
「くそ、ダメか…。」
 姉ちゃんは完全に錯乱している。
「気絶させりゃ、止められんじゃねぇのか!?」
「うわあああ! 根っこがもう目の前に!」
「くそ…! ごめん、姉ちゃん!」
 俺は、できる限り手加減して姉ちゃんを気絶させた。
 だが……根っこは消えない。
「グレート…、コイツは完全に姉ちゃんの意識から離れてやがるぜ。」
「お、おりゃぁ、何度か見たことあっけどよぉ…、コイツは完全によぉ、暴走状態って奴だ! 本体の意識じゃ操れねえほどスタンドが強えか、意識の強さが足りなくってスタンドが好き勝手してるやつだ!」
 逃げ場はもうない。このまま姉ちゃんのスタンドにやられちまうのか?
 すると、目と鼻の先まで迫っていた根っこが急に止まり、勢いを無くしていった。っというよりは、まるで俺達のために道を開いたって言った方が正しいか?
「? 行けってことか?」
「ちゃ、チャンスだよ! あ、でも…。僕を射貫いた弓と矢は?」
「康一?」
「ぼ、僕は、仗助君のおかげで生きてるけど! もしまた矢で射られた人が出たら、今度こそ死ぬかもしれないんだよ、この町で!」
「…もう手遅れだぜ、そりゃ。」
「億泰…、てめぇら…!」
「兄貴は、あるスタンドが使えるスタンド使いを探して次から次によ~、人をあの弓と矢で射ってきたんだぜぇ! そんな中にゃ死んだ奴もいた!」
「そんな…。」
「億泰。教えろ。お前らは何でスタンド使いを探してんだ? どうして形兆の野郎は、姉ちゃんのスタンドが必要だって言いやったんだ?」
「そいつは…、屋根裏部屋に行けば…。」
「やねうらべや?」
 俺は姉ちゃんを背負い、屋根裏部屋へ向かうことにした。
 部屋どころか、家中に赤い根っこが張り巡らされているみたいだ。けど、俺達のために道だけは開けてくれているらしい。
 屋根裏部屋に入ろうとした直後、形兆の野郎のバッドカンパニーの砲撃が飛んできた。
 咄嗟にクレイジー・ダイヤモンドで防げたものの、危なかったぜ…。
「仗助…!」
 形兆の野郎が部屋の壁の端に背中をつけて座り込んでいた。アイツの周りには、アイツから咲いた物なのか、青いバラの花が散乱していた。
「止めたのは、お前か!? あと少しだったのに!」
「どういうことだ?」
 すると部屋の奥の隅っこで何かが蠢いた。ジャラジャラと鎖が鳴る音がした。
 そこには、この世の物は思えない、醜い肉塊?がいやがった。鎖の音は、首に付けられたでっかい鎖の音だ。
 それから語られたのは、形兆と奥泰の二人の親父の話だった。
 あの肉塊の正体は、DIOって野郎の肉の芽で変貌してしまったアイツらの親父さんだった。
 そして、形兆の野郎は、死ねない怪物になっちまった親父を殺すスタンドを探して弓と矢で次から次に人を射ってスタンド使いを生み出していたのだという。

 だが…、最近になって、転機が訪れたのだと言った。

 死にかけの犬猫やホームレスから咲いた赤い茎の青いバラを摘み取る、赤い根っこを見つけ、それが、スタンドだと分かり、そのスタンドの持ち主が他でもない、俺の姉ちゃんだって知ったのだと言いやがった。
 形兆の野郎が言うには、杜王町中に赤い根っこは張り巡らされていて、なぜか普通の人間にも見えるし、青いバラの花を拾えるのだとか。
 そして、アンジェロの野郎に殺されたが、生き返ったうちのジジイを見て確信したのだとか。
 姉ちゃんのスタンドから咲く青いバラの花は、生命の寿命そのモノだと。


 生と死を自在に操れるスタンド。


 それが姉ちゃんのスタンドだって言いやがった。
 信じがたい…。けど、筋が通る! あの青いバラの花が寿命…、命そのモノだったんなら、ジジイが生き返ったカラクリも分かる!

「だが…、たったひとつ予想外だったのは…、東方ミナミの意志じゃ操れる代物じゃなかったってことだけだ…! スタンドとは、車やバイクを運転するのと同じなのだ! 能力と根性のないウスラボケは、どんなモンスターマシンに乗ってもビビってしまってみみっちぃ運転するよなぁ! ミナミと、そのスタンドはまさにそれだ!」

 この野郎! 知ったような口利きやがって!

 姉ちゃんがどれほど、“怖がっている”のかも知らねぇで! その恐怖をなにも知らないくせに!

「う…。」
 その時、俺が背負ってた姉ちゃんが目を覚ました。
「姉ちゃん…。」
「ぅ、ぁ……、にげ…て…。おねが…ぃ…。」
 姉ちゃんが夢にうなされてるみたいにうわごとのようなことを言いながら、泣いてる。酷く震えてる。
 なんだ…? 猛烈に嫌な予感しやがるぜ!
 虹村の親父さんが、箱をバタバタと漁っていた。まさか!っと思ってそっちを見たら、天井や床、壁からまるで狙いを取っているように根っこが現れてやがった!
「逃げ…!」
「い……ゃ…、、だ、ダメ…。いやだぁああああああああああああ!!」
 姉ちゃんが頭を両手で押さえて、のけぞった。その瞬間、虹村の親父さんを赤い根っこが押しつぶすように襲いかかり、包み込んでしまった。
「は、ハハ、ハハハハハハハハ! ついに、ついに!!」
 形兆の野郎が狂ったように泣き笑ってやがった。
「親父…。」
 ぼう然として見ていることしか出来なかった。
 やがてドブ水みたいな液体だけが残り、赤い根っこが消えたあとには、一輪の青いバラの花だけが残った……。
 俺の背中で、姉ちゃんが声を上げて泣いてた。
「お、親父はよぉ…。なんでかいっつもあそこの箱ん中、意味も無く漁っててよぉ…。」
 億泰が泣きながらブツブツと、今までのことを呟いてる。
「箱…。」
 俺は、姉ちゃんを床に降ろして、箱に近づいてから、中身をクレイジー・ダイヤモンドで復元した。
 すると、一枚の家族写真ができあがった。
「なっ…!?」
「……意味は…あったぜ。」
 俺は、写真を座り込んでいる形兆に渡してやった。
 大量の汗をかき、やがて形兆は、体を丸めて大声を上げて泣いた。億泰も泣いてた。

「ごめんなさい…。」

 康一に背中を摩られている姉ちゃんが、顔を両手で覆ったままそう謝罪する声が聞こえた。

 
 

 
後書き
東方家の祖父、良平さんが悲劇から生還したけど、その代わり……虹村兄弟は悲劇に見舞われる。

奇跡は、有限。不平等。

ミナミのスタンドは、そんな不平等の体現として書きたかった……。

そして、今回でついに自分のスタンドの存在と力をハッキリと知ったミナミは……。


なお、虹村兄弟の父親を殺したのは、ミナミの意志ではありません。スタンドが勝手に動きました。 
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