夢幻水滸伝

「それはな」
「ううん、仇名については」
「仕方ないやろ」
「そうなるか」
「仇名はいいに越したことはないですが」
　それでもとだ、巴も言った。
「ですが」
「ですが？」
「悪い仇名でも笑って済ませられれば」
　こう花華に言うのだった。
「いいですね」
「そうなったらか」
「若し犬のうんこを踏んで」
「それが仇名になったら」
「どうしたものかとなりますが」
「それあんたのことか？」
「私が踏んだのは鼠の死骸でした」
「そっちか」
「はい、そしてです」
「仇名が鼠になったんかいな」
「ペストでした」
「ああ、鼠といえばペストやからな」
「どうにもとなりました」
「そらそんな仇名やったらな」
「全く以てです」
　巴は鶏のその顔をどうかというものにさせて述べた。
「困りました」
「そやろな」
「はい、ですから」
「仇名はやね」
「いいものであればいいですが」
「悪いものでもやね」
「今は受け入れたいと思っています」
　こう言うのだった。
「過去のことを思えば」
「器が大きくなりたいんやね」
「そうですね」
　巴は花華の言葉を否定せずに返した。
「要するに」
「人として大きくなるとな」
　それでとだ、呉も言ってきた。
「ほんまにええな」
「左様ですね」
「仇名位笑い飛ばせる」
「どういったものでも」
「そうなればな」
「仇名はね」
　郭も話に入って来た。
「どうしてもつくからね」
「はい、そして私はペストでして」
「困っていたんだね」
「呼ばない様に言いそれが何故かも言いました」
「そうしたんだ」
「心ある人達は止めてくれましたが」
「世の中色々な人がいるんだよね」
　郭は遠くを見る目で巴に話した。
「正直なところ」
「そうです、底意地の悪い人もいまして」
「そうした人にだね」
「言われていました、ですが」
「これからはだね」
「そんな人達のことはです」
　彼等に言われてもというのだ。
「気にしない様に器を大きくしていきたいです」
「それがいいね、巴君抜群に頭がいいから」
　軍師だけあってだ、彼の策が中国にとって大きな役割を果たしていることは中国では誰もがよく知っていることだ。
「そこで人としての器も大きくなるとね」
「さらにですね」
「そう、いいから」
　だからだというのだ。
「頑張っていこうね」
「それでは」
「意地悪い奴とは付き合わんことや」
　魯は巴に笑って話した。
「最初からな」
「それがいいのですね」
「そんな奴は最初は違ってもじきに嫌われる」
　そうなるとだ、魯は言うのだった。