戦国異伝供書
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第四十六話 砥石攻めその五
「見て回りたいですが」
「そうしたいか」
「はい、城の中を巡って」
「いざとなればか」
「城の中を動きやすい様に」
そうなる為にというのだ。
「ここはです」
「よくか」
「はい、城の中を見て回って」
そうしてというのだ。
「城の中身を頭の中に入れて」
「動きやすい様にするか」
「明日の夜に」
「そうか、お主はそこまで考えておるか」
「動くにもです」
それにもというのだ。
「よいので」
「そうか、ならな」
「それならですな」
「そうせよ、しかしやはりな」
幸村のその話を聞いてだ、また言った矢沢だった。
「お主は真田家一の兵法者じゃな」
「またそう言って頂けますか」
「ことに備えて今動くとはな」
このことを見てというのだ。
「やはり見事じゃ」
「そうですか」
「うむ、ではな」
「はい、これより」
こう話してだった、幸村達はまずは忍び時を待った、その間晴信はというと。
しかと待った、それで諸将に言うのだった。
「待つこともな」
「戦ですな」
「焦らず惑わず」
「そうすべき時もありますな」
「それが今じゃ」
こう言うのだった。
「動かざることじゃ」
「山の如く」
「それが今ですな」
「だからですな」
「今は動かず」
「夜を待ちますな」
「そうじゃ、そして夜になればな」
その時はというのだ。
「動くぞ」
「速くですな」
今度は横田が言ってきた。
「風の様に」
「そうじゃ」
「動くのですな」
「そうじゃ、しかもじゃ」
「静かに」
「音もなく動いてじゃ」
「林の様に」
横田から言った言葉だ。
「そうするのですな」
「うむ、そしてじゃ」
「そのうえで」
「うむ、そして城ではな」
「源次郎達がですな」
「攻めはじめる」
「それも激しく」
ここで横田はまた言った。
「火の様に」
「そうするからな」
だからだというのだ。
「お主は先陣としてじゃ」
「その源次郎達と動きを合わせ」
「そしてじゃ」
「攻めるのですな」
「そうせよ、そして今はな」
「動かぬことですな」
「夜を待つのじゃ、夜になれば」
その時にというのだ。
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