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戦国異伝供書

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第四十六話 砥石攻めその四

「だからじゃ」
「この度もですな」
「そうして戦われますな」
「そしてですな」
「勝たれますな」
「そうする、必ずな」
 こう言ってだ、幸村は十勇士達をはじめとした真田の忍達を率いてだった。
 そうして闇に紛れて城の中に入って矢沢家の者と話した、すると彼等は真剣な顔になって幸村に応えた。
「時が来たな」
「ではですな」
「うむ、明日の朝じゃ」
 その時にとだ、矢沢家の主である矢沢綱頼が応えた。見れば幸隆より幾分若いがよく似た顔をも持っている。
「前以て兄上から話されていたが」
「あえてですな」
「村上家につけとな」
「そしてこの城を固める」
「そう村上殿に申し出てな」
「この城にいろと言われていたのですな」
「今の今までな、まさかじゃ」
 矢沢は幸村に真剣な面持ちで言った。
「この様なお考えがあるとは」
「それこそですな」
「夢にも思わなかったが、最初は」
「しかしですな」
「やがてわかった、この城が武田家の手に落ちればな」
「信濃の北はです」
「武田家のものとなる」
 流れとしてそうなるというのだ。
「そうなるからな」
「だからですな」
「ここはじゃ」
 まさにというのだ。
「明日の夜じゃ」
「はい、兵を挙げますな」
「そして城の中に火を点けてじゃ」
「暴れ回り」
「武田の兵が来ても迎え撃てぬ様にしてな」
「城の門もですな」
「開ける」
 そうもするというのだ。
「必ずな」
「さすれば我等も」
「宜しく頼むぞ」
「承知致しました」
「是非な、しかしお主が来るとはのう」
 矢沢はここで幸村を見てだった、すっと笑って述べた。
「真田家で一番の武芸者であり兵法者であるお主が」
「勿体ないお言葉」
「それだけ兄上も本気ということじゃな」
「この城、信濃の北を手に入れるにあたって」
「そういうことじゃな」
「この城を手に入れれば」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「非常に大きいからな」
「それでそれがしをですか」
「送ったな、お主は真田家一の忍の者でもある」
 そうでもあるからだというのだ。
「十勇士達と共にな」
「この者達もですな」
「そうじゃ、では明日の夜までな」
「我等はですな」
「わしの持ち場におってじゃ」 
 そのうえでというのだ。
「時を待っていてくれ」
「それでは」
「明日の夜に備えて休んでおいてくれ」
「そうしていいですか」
「飯も食ってな」
 このことも忘れない様にというのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで休み」
「明日の夜じゃ」
「動くのですね」
「そうしてくれ」
「ではまずは城の中をです」
 幸村は休めと言われたがまずはこちらだと言うのだった。 
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