ソードアート・オンライン ー合わさる剣は2つの世界を一つにしてー「ある科学者とある剣士の物語」
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弟十二話「孤高の剣」
転移門で剣神連合の仲間と出会った。
「ロイ、ルーそしてトウヤ、ハル、そしてレイ、みんな誰も死ぬなよ」
「元気だな、ジン」
「キリトさん、アスナさん」
「今日はよろしくね、ジンくん」
「はい、アスナさん」
ロイ、ルー、トウヤ、ハルが全員あいた口が塞がらない。
「おい、ジンどういうことだ、キリトさん、あ、アスナさんまで」
「うん、友だちになった」
「前から思ってたけどジンあんたネットゲーマーにしてコミュ力たかいのよね、もしかしてリアルはリア充」
「え、みんな友だちくらいいるだろ?」
トウヤとハルが顔色を変えた。
「もしかして女友達もいるのか」
「ああ、いるよ」
「紹介しろよこら、俺たち二人に」
「いいけど、みんな体育会系だぞ、みんな体動かすの好きだからアクティブだぞ」
「う、どんとこい!」
「おれだって」
「まあ、友だちだしな。言っとくけど下心丸出しだとすぐに見抜かれるぞ」
「ジン様ー見捨てないで」二人がまるで雑巾みたいにジンにすがりつく。
「おやおや、ジンくんの周りは楽しいな」
主役の登場だ。血盟騎士団ヒースクリフ。
「ヒースクリフ、俺はあんたがあんまり好きじゃない。キリトさんたちを危ない橋を渡らせて」
「そのことは済まないと思っている。だが今日は味方だ。私の予測が正しければ君たちの力はかなりの戦力だ。期待してるよ」
「分かった。俺の覚悟に変わりはない。もしあんたが殺されそうになってもちゃんと守るさ」
「頼もしい。では行こう、コリドーオープン」
ボス扉前。
「いいかみんな敵の姿がわからない以上前衛に盾を集中させる。いいか円陣だ。ボスのステージは円形だ。円の外側に盾の壁を創る。中心には俺やキリトさんがいる。最初が肝心だ」
「はい!」
「では行こうか、諸君」
全員、ステージの中央に集まった。
なんだ?なにか見落としている?
「上よ!」アスナさんが叫ぶ。
しまったあ!
「全員、壁際へ走れ。ロイ、ルー、トウヤ、ハル、レイ!来るぞ」
大きな鎌が風のように迫る五人の剣がその鎌を止める。グリムリーパー、骸骨のムカデ。でかい。
「鎌だ。両腕の鎌に注意しろ、鎌は俺たちが惹きつける、キリトさん。アスナさん」
「ああ!」
2つの鎌の攻撃範囲がでかすぎる。何人かやられた。ちくしょう!
一つをヒースクリフ、キリト、アスナさんが止める、もう一つを俺とレイが止める。
こいつの機動力は明らかに全エネミー中最高、しかし2つの鎌さえとめればこいつの攻撃手段はなくなる。はずだった。
尾の一振りでまた何十人かやられた!
だが俺たちは動き回る敵の鎌だけに集中する。ロイ、ルーそしてトウヤ、ハルにはみんなの護衛に回らせた。俺とレイの機動力を活かすためだ。
もう三十分以上は戦っている。みんな、胴体の方に臆することなく攻撃できるようになってきた。playerの攻撃が当たりだして連鎖的になってきたら、そいつはもう攻撃手段がないということだ。あとは、HPバーを削りきるまで、俺たちが気を抜かなければいい。
HPバーの最後の部分を削るとグリムリーパーは消えた。それと同時に門が開いた。その時、何かの影が入った。
全員にあまりの疲労に呆然としている。
しかし俺は一人の男に目が止まった。ヒースクリフだ。あの男これだけの激戦に汗の一つも掻いてない。
なんだ、それにこの男の顔どこかで俺の脳裏によぎるあの一人の天才。
そうだ、俺は知っていた。この男の立ち居振る舞い、言動。
俺は鎧の内側から短刀を取り出して、静かに投げた。それと同じにもうひとりの剣が動く。
同時に二つの攻撃がヒースクリフに炸裂した。
ヒースクリフは驚いていた。しかしオブジェクトが再生された。インモータルオブジェクト、不死属性。
「くっくっく!あっはっはっは。これでは言い訳のしようがないな、ふむ。さて、まずはキリトくん、何故わたしを攻撃したのかね」
みんな、何が起きてるのかわからないといったふうだ。しかしキリトさんと俺だけは確信をもっていた。
「俺は簡単な心理を忘れていた。ゲーマーとして、人がやってるゲームを横で見ているほど退屈なものはない。初めに革新したのはあんたとのマッチゲームの時だ。最後の瞬間、あんたあまりにも早すぎたよ」
「そうか、やはりあのときは思わずシステムのオーバーアシストを使ってしまった。あれは私にも痛恨事だった。ということは私が誰かも分かっているのだね?」
「茅場晶彦……そうだろう?」
「見事だ。そしてジンくん。君の答えは分かっている。SAOを作る際どうしても武術の知識のあるものが必要だった。当時わたしは四人の武術家に依頼した。北辰一刀流、示現流、柳生新陰流、そして君だ。そして最後に残ったのが君だ。思えば私は君に少し興味があった。かなり哲学や宗教、思想にもあかるく親が建築家のせいかデザインにも明るかった」
ヒースクリフは、何も変わってない。あの悠然と余裕のある物腰は今もそこにあった。
「しまいには自分でファンタジー小説を執筆しているというじゃないか。君はソードスキルの根本となる動きの基礎とアインクラッドの建築そしてSAOの世界観そのものにも多大な影響を私に及ぼした。君はこのデスゲームの共同制作者でもあるのだよ。私の推測では君はユニークスキルを習得しているだろう。あろうことか私は自分の世界に最強の刺客を招き入れてしまった」
「俺のユニークスキルか、そんなことよりあんたを慕っていた血盟騎士団のみんなにいうべきことがあるんじゃないか?」
騎士団のメンバーは、恨みと憎しみとそして自分への嫌悪の念で茅場を、いやヒースクリフをにらみつけていた。
「団長!いや茅場!お、俺達の忠誠心をあんたは」
「皆、よくやってくれた。私は嬉しいよ」
「だ、団長やっぱり違うんですね!?何かの間違いなんですよねえ!」
茅場の表情は、とても冷めていた。目の前の二十数名になんの情もないようだった。
「いや、わたしが茅場 昭彦だ。まさか、不死属性のオブジェクトを見てもわたしに忠誠を誓ってくれるとは。いやはや、これは騎士団を置いておくのはとても惜しいよ」
「団長?か、茅場ぁー!」
「私としてもここまで育てた血盟騎士団をおいていくのは気が引ける。だがこうなってはしかたない私は99層の宝玉宮で待っている。そこで最終ボスとして君たちを待つことにしよう」
「最強のプレイヤーが一転して最悪のラスボスか」
「我ながらいい筋書きだろう。キリトくん。二刀流スキルそしてジンくん君のユニークスキル龍剣。これは全プレイヤー中最大の反応速度と最大のプレイヤーテクニックを持つ二人のプレイヤーに与えられる。一人の魔王に二人の勇者。そういう筋書きだ」
「はは、俺のユニークスキルもお見通しか」
「忘れてはこまる、私はSAOの創造者だよ、さて君たちにはチャンスをやらなければキリトくん、ジンくん。君たちにチャンスをやろう、今ここで2対1のデスマッチに参加できる権利だ。もちろん不死属性は解除する。だが私もユニークスキル使いを二人も相手にするのだ。レベルは10プラスさせてもらう。だがその前に、私はね。キリトくん、ジンくん」ヒースクリフの後ろに三人の人影が。
「SAO史上最強のプレイヤー二人を相手にするほど愚かではないよ。ジン君。前に君の策略にまんまとハマったわけだが。あの時の三人どうやってわたしのギルドに引き入れたと思う。君も知っての通り彼らはかなりの剣の達人、それが誇りであり、そして矜持だ。ならばなぜ?ジン君、君も感じているだろう。この世界は危ない均衡の下で成り立っている。少しの政治的ミスで30年後に世界大戦が勃発してもおかしくないだがこの日本という国はどうかね?戦争で自衛隊が人が殺せると思うかね?確かに技術や軍備は世界でもトップクラス。だが結局は人を殺す覚悟のないものの集まり。わたしはこんな貧弱な国が嫌で嫌でしょうがなかった。周りを見てもどいつもこいつも何の覚悟もなくただ時間と金を浪費して享楽をむさぼるそんな無気力な若者でいっぱいだ。そんなものが本当の大戦になったとき何の役に立つのか?きみたちは知っているだろう人と死をかけて戦うということをそうこのSAOは無気力な若者に本当の戦士の魂を吹き込む繭なのだ。三人は、約束してくれた私の死後この堕落した世界に本当の戦士として生きるということを。」
すると「ラオ」「アルダ」「テオン」の三人は、皆ヒースクリフを守るように剣を構えた。
「何言ってやがる。人を殺す覚悟?そんなものが必要にならないような世の中にするからいいんじゃないかよ!」
「ジン、それは理想論だよ」
「ラオ、アルダ、テオン!おまえら、古武道の精神を忘れたのかよ」
「いや、むしろそれがあるからこそ僕らは、こっち側についたんだよ。人は殺し合いをしていかなければどんどん貧弱になっていく。つまり戦争が人類を、歴史を作ったんだよ。ジン」
「やっぱりあんたたちはそういうつもりで初めからこのSAOに入ったんだな?」
「ああ、俺らは茅場先生の信奉者だ。こののちVRMMOは、大流行するだろう。そしたら若者はどうなると思う?VRが見せるものは? 茅場先生はいっただろう。これはゲームではないと……」
「そうすれば世界中、それも日本が中心となって、スポーツのように浸透していく。幻想の中で彼らは気づけるのか?」
「それは、私の考えていることの一部でしかない。」
そのときだ、みんなの体が地に落とされた。麻痺だろう。
「な!?」
「いいかね、ジンくん。そしてキリトくん。人が友とすべきものとは、死そのものだよ。人は死ぬからこそ、刹那の生を燃え尽きるまで生きようとするのだよ。さあ、最終ラウンドの余興と行こうか!」
俺はキリトを見た。キリトの目には覚悟があった。互いに頷く、同時に剣を抜く。
死そのもの、そうだろうか……いや!
「キリト!」
「ジン」
後ろを振り返るとみんなの顔があった。
「茅場、一つ約束しろ。もし俺たちが負けたらアスナを一定期間自殺できないようにしてくれ」
「キリトくん!そんなのダメだよ」
みんな口々に叫ぶ。。俺は黙った。こいつに勝てればあとでいくらでもこいつらと楽しくやれるんだ。
今から俺はこの人たちを殺す。
「キリトさん
隣のキリトさんも戦いに集中し始めた。
俺は龍剣を発動した。
三人は、テクニックの上で俺には勝てないが、三人まとめてではおよそ三倍。これでは勝負にならない。その時だった。
「やあ、二人とも。ここはわしがやろう」
そこに現れたのは、臥王だった。
「臥王さん!」
「ふふ、茅場!お前ともあろうものが正体が割れると同時にこっちの拘束まで解くとは甘いなあ!ふふ」
「臥王、君の存在はまるで忍び寄る影のようだった。君のことは正直言って怖いよ。力だけで言えば間違いなくSAO最強プレイヤー。しかしではどうして君にはユニークスキルが割り当てられていないのか?」
「それは、データ改ざんをしているからだろう?」
ヒースクリフは、ため息をもらした。
「そうだ、君は騎士道精神に反して自分のステータスを不正に改ざんしている。まさか本当のチーターがこの私のゲームに迷い込んでくるとは」
「プレイヤーネームは、ヒースクリフとかいったな。茅場、俺は現実の自分の肉体と同じくらいのパフォーマンスが出せるよう調整しただけだ。行き過ぎたステータス改変は、自分の体の技を鈍らせるだけだ」
「そう、君はチートを正しく自分が有利なように使った。まるで五輪書を記した武蔵のように。君は戦いとは型にはまったものとするべきではないことをしっている」
「ああ、ちなみに実際にここで俺がゲームオーバーになってももちろん俺は死なんよ?
ナーブギアのからくりは改造させてもらった。わしほどの人間になるとその事件にあったデバイスを開発するくらいはできる。ま、わしの考案だがな。しかし、これで実際の人間が死なずとも、意識だけを戦場に送るシステムが確立してしまったがな」
「臥王、君は本物の戦士だ。このSAOは君を歓迎するよ」
「おまえなどに歓迎されたくはないがな」
剣を抜き放つ。
切っ先から冷気が刺すように感じられる。
動く。
三人は、初動さえ封じられて斬られた。
なんだか、まるで無駄がない。ソードスキルは使っていない。
単純に剣で人を斬ったそれだけだ。
「あ、うわああ!」
「死ぬ!死んじまう!」
「いやだああ!」
「ぬかせ、覚悟ができているのであろう?」
臥王の顔は恐ろしかった。毛が逆立ってまるで鬼神のようだ。
三人はただの青いオブジェクトとなって散っていった。あまりにも当然のように。
臥王は、ガクッと膝をつく。
「む、ぬう。動けん。ヒースクリフ」
「これは、思っていたよりもすごい。本当の殺人剣はこれほどのものか、予想を少し修正しなければ」
「おい、茅場」
「ああ、君は正攻法でここにいるわけではないだろう。臥王よ。つまりわたしも君に対しては正攻法ではない方法がとれる。ここは私の世界。君は、他人の世界に入りすぎた」
「そうか、毒だな?」
「ああ、君のアバターを通して、君の体へ続く、そしてそこの研究機関の電圧を操作している。今頃、研究所は大火災だろう」
「そうか、VR ではこういうことが起こるか」
臥王は、笑ったまま、言った。
「システム、サインアウト」
臥王が消えた。
「ふふ、食えんな。脱出法はちゃんと持っていたか」
「茅場ああ!」
キリトさんが動く。案の定真っ向から攻める。
「さあ、キリトくん、ジンくん。余興は終わった。やろうか」
二人は、身構えた。
後書き
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