八条学園騒動記
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第五百十八話 齧歯類の話からその九
「余計にいいかもね」
「それわかるよ、ライバルがずっといたら」
「物語が面白くなってね」
「主人公も映えるしね」
「本当に主人公が強いだけだと」
それのみならというのだ。
「面白くないのよね」
「僕も自分の読んだお話思い出してわかったよ」
「強い主人公には強いライバル」
「それが必要だね」
「悪役でもね」
パレアナはさらに言った。
「強くて格好よくないとね」
「悪の魅力というかね」
「そんな風じゃないとね」
「主役も映えないしね」
「そうそう、だから太公望が映えるには」
封神演義でもというのだ。
「聞仲が強くて格好よくないとね」
「二郎真君や哪吒がまとめてかかっても敵わない」
「そして紂王にも堂々としてて」
このことは原典でも同じだ。
「そして妲己にもね」
「ああ、同じ殷にいてもね」
ジミーはパレアナの話から封神演義の特徴の一つに気付いた、それは創作ではよくあることである。
「対立関係にあるね」
「妲己は殷を滅ぼそうとしてるでしょ」
「そうそう、紂王を惑わせてね」
そうしてというのだ。
「殷を滅ぼそうとしているね」
「紛れもなくね、けれど聞仲はね」
殷の太師、宰相の上にあるまさに殷第一の臣である。
「殷を守ろうとする」
「そうした人でしょ」
「だったらね」
「そう、同じ殷にいても」
「対立しているね」
「殷を滅ぼそうとしている勢力を殷を守ろうとする勢力」
この二つの勢力のというのだ。
「それぞれの代表がね」
「妲己と聞仲だね」
「そうなのよ、そこに周もあって」
「実質三つ巴だね」
「そしてそこに仙人達も関わる」
二つの勢力に分かれた彼等がというのだ。
「そうなってるのよ」
「中華ファンタジーの戦争ものだね」
「要するにね、そして西遊記は」
「冒険ものだね」
「そうなるのよね」
「どっちも有名な作品で」
それでとだ、また言ったジミーだった。
「よく創作の題材にもなってるね」
「多少アレンジされた原作に忠実なお話もあるし」
「西遊記だと三蔵法師が足手まといじゃない」
「原典はもうどうしようもないから」
徹底した足手まといだというのだ。
「孫悟空達の邪魔なの」
「まあ結局は普通の人だしね」
「見えないもの、わからないものが多いから」
神である孫悟空達と比べてだ。
「けれどそこをね」
「三蔵法師を立派な人にして」
「それで書いてる作品もあるから」
「パレアナも読んだんだね」
「封神演義もね」
「そっちは聞仲が原典以上に強くて格好いい」
「しかも出番もかなり多いわよ」
原典と比べてというのだ。
「最初から最後の方までね」
「出ているんだ」
「それで周の前に立ちはだかるのよ」
「そして妲己ともだね」
「対峙するのよ」
全ては殷を守る為にだ。
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