八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百三十一話 現在進行形の美しさその四
「もうどうしても怒る人で」
「評判悪かったよな」
「安政の大獄以外のことでもね」
「天性の嫌われ者だったんだな」
「元々は違ったらしいけれど」
井伊家に生まれてもかなり後に生まれてこのまま埋もれて死んでいくのだと自分でも諦める位にだ。それで学問や居合や茶道、陶芸に打ち込んだのだ。
「井伊家を継いで大老になって」
「悪く変わったんだな」
「悪い面が一気に出て」
「それで嫌われ者になったか」
「暗殺されたけれど」
そして今僕達が見ているみたいに首を取られた。
「江戸城でも大喜びでね」
「江戸の町でもだよな」
「喝采だったっていうから」
「本当に嫌われてたんだな」
「それは間違いないね」
調べているとだ。
「それで今もだからね」
「幕末一の不人気人物だよな」
「そしてその不人気さが為にね」
「お化け屋敷でも出ているんだな」
「それでね」
それだけでなくだ。
「今君もね」
「こいつ呼ばわりか」
「そうしてるんだよ」
「そういうことだな」
「僕も好きじゃないしね」
安政の大獄のことでどうしても好きになれない、小谷君程嫌いではないにしてもそれでも好きではないことは事実だ。
「やっぱり」
「本当に天性の嫌われ者だよな」
「行いが行いだから」
「幕末最大の悪役だよな」
「全然タイプは違うけれど」
それでもだ、僕は話した。
「三国志だと董卓かな」
「嫌われっぷりは同じ位だな」
「董卓は武力で逆らう者は殴り殺すタイプだったけれど」
三国志演義を見るとそんな感じだ。
「この人は権力を濫用してね」
「人を殺してるよな」
「うん、合法的だけれどね」
幕府の慣例、刑罰を軽くするそれを破っていても法律は法律だ。悪法でも法律は法律であるということだろう。
「それでもね」
「董卓はもうその場でぶち殺してるけれどな」
「野蛮な軍勢を背景にしてね」
「こいつは一応学問とかあったな」
「学問はあったんだよ」
あと芸術的才能も開花させていた、若い頃の埋もれていた日々の中で。
「軍勢は持っていたけれど」
「使わなかったな」
「井伊家の赤備えの軍勢はね」
こちらはというのだ。
「使ってなかったよ」
「大老になった権力で色々やってたな」
「家柄でね、そこは違っても」
それでもというのだ。
「悪役なのは同じだろうね」
「最初の頃に出て来るな」
「言うなら黒船が黄巾の乱で」
物語のはじまりの大事件だ。
「それでこの人がね」
「董卓でな」
「殺されて」
「話が一気に動くな」
「そこまでかなり腹立つことがあって」
董卓の暴虐三昧とその安政の大獄だ。
「けれどね」
「どっちも暗殺されるからな」
「それで拍手喝采だから」
そうなることも同じだ。
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