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女神と星座の導きによりて

作者:草ナギ
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星39 真名戦前編

 シャカ以上の実力、というよりも小宇宙だが、真名は小宇宙のコントロールに関して天才的な才能を持っていた。
 なんといっても、たったの一日で小宇宙を感じ取り、大岩を翌日には粉砕させてみせたのだ。
 それから彼女は考えた。
 
 「そうです、シャカさん(この時はシャカに会っていないのでさん付け)は常に視覚を封じる事で小宇宙を内側に秘めているんですから、普段から五感全てで小宇宙を抑えて生活したら良い線行くんじゃないでしょうか?」

 そして、これをもし,近くでデスマスクが聞いていたら

 「馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、頭おかしいんじゃねーか?アイツ」

 っと言っていたであろう。
 だが、真名は実際にそれを実行し、成功させていた。
 そんな馬鹿なと思うであろうが、事実である。
 実際にその事を痛感しているカノンは此処には居ないが、もし、居たとしたら

 「アイツは、ある意味変人だと思う」

 そうぶっちゃけるだろう。
 そしてデスマスクと共に双魚宮裏行きになる事が決まっていたと思う。
 二人は犠牲となるのだ。
 そう、小宇宙馬鹿の犠牲にな……。
 え?そんな事を言っているとナレーションやっている自分もヤヴァイって?
 …………。
 真名はただ佇んでいるのみであった。だが、それだけでも分かってしまう。
 彼女から滲み出る小宇宙のオーラが。
 こちらを見据えた濁った瞳が。
 だけれど、決してあちらからは仕掛けて来ない。
 仕掛けて来ないというよりも、見様によっては我慢している様にも見える。
 やはり魔拳に抗っているのであろうと予測する。
 動かないのであればチャンスなのではと思うだろう。
 しかし、シュラは嫌な予感が脳裏をよぎって離れない。
 そこでシュラは近くに落ちている手のひら程の柱の欠片を拾い、真名の近くに投げつけた。
 そう、”真名に投げた”のではなく、”真名のすぐ横に投げつけた”のである。
 
 「シュラ!?」

 「一体、何を……?」
 
 ミロとカミュがシュラに問う。
 そして投げた先を見る。
 
 パァーンッ!

 そんな甲高い音がした。
 投げた石が砕け散ったのだ。
 しかも真名は”どこも動かしてはいない”様に見える。
 先ほどもそうだ。
 黄金の四人と紫龍、氷河は見ていた。
 星矢と瞬が”見えない何か”によって弾かれたのを。
 いや、そう見えただけで真名はちゃんと動いていた。
 手を動かし、星矢と瞬を二発の平手によって吹き飛ばしたのである。
 光速の速さで。
 黄金聖闘士は光速の速さで動き、扱う事も出来る。
 だが、真名のソレは黄金聖闘士である四人でも辛うじて見えただけ。
 そんな速さで叩かれた星矢と瞬は、よく無事だったなと頭の片隅で思う。
 つまり、シュラがやって見せた事は、動かないでいる様に見える真名の横を、普通の方法では星矢達を通らせる事は出来ないという事である。
 
 「ちょっ、マジかよ」

 「……今の、見えなかった」

 けれど、その見えない動きに対し、直接ソレを受けた星矢と瞬は怪我一つしていない。
 考えられるのは一つ、真名は人間相手に手加減しているという事。
 そこにチャンスがあるかもしれない。
 瞬時にそう察して、黄金の四人はお互いにアイコンタクトを取り、一つ頷く。
 
 「一気に方を付ける!行くぞ!」

 シュラが三人にそう言って走り出す。
 三人もそれに付いていく形で走り出した。
 まず、先手を取ったのは……カミュだった。
 
 「【カリツォー】」

 真名の周りを凍気の輪が満ちていく。
 カリツォーは凍気の力によって動きを封じる技である。
 一つの輪では効果は薄いが重ね掛けが可能なため、複数の輪を生成した方が効果は高くなるが、時間がかかる。
 一時的な技でもある為に、初見での使用でしか効き目はない。
 昔、どんな技であるか説明した事があったが、実際に使って見せた事はないので、一度ならば効き目はあるだろう。
 実はミロと戦う前に氷河がカリツォーを使っている。
 一払いではねのけられてしまったが。
 だからこそ今、この瞬間でしか真名に対して使えないのである。
 思ったとおり、背にはためかせていたマントで一払いしようとした真名。
 それを見逃さず、ミロとアイオリアが動けない真名の左右に移動して両腕をしっかりと掴んだ。
 
 「今だ!星矢達!」

 「走り抜けろ!」

 その言葉を聞いた青銅の四人は頷き合い、急いで真名を掴むミロとアイオリアの横を通ろうとしたが

 「……離しなさい」

 そうぽつりと言って真名は、おもむろに両腕を掴んでいるミロとアイオリアごと一度己に引き寄せ、思いっきり反動をつけて両腕を小宇宙と一緒に大の字で放ち、ミロとアイオリアは吹き飛んでしまった。
 
 「「うああああ!!」」

 「アイオリア!ミロ!」

 星矢が立ち止まりそうになったが、直に

 「こちらの事は気にするな!走れ!」

 カミュにそう言われ躊躇したが、その言葉に頷き、急いで走る。
 そこで、真名は星矢達に拳を向けようとしたその瞬間、足元が大きく崩れた。
 
 「聖剣(エクスカリバー)!!」

 その技名と共に。

 「!!」

 大きな切れ目が己の足元に出来た事に驚き、一瞬硬直してしまい、そのまま足を滑らせ、大きな切れ目に落ちてしまった。
 てっきり攻撃してくるなら己自身にしてくるだろうと思っていたので、出ばなをくじかれた気がした。
 だが、真名はよくも邪魔をしたな。という気持ちと、良くやってくれた。という気持ちの両方を感じている。
 後半は真名の本心であろう、前半はどうみても魔拳の影響である。
 横になっていたのを直に起き上がり、上を見る。遠くの方で駆けていく音がする。
 この音は星矢達であろう。今直に追いかけて

 「殺さなければ……」

 呟いた瞬間、頭に衝撃を感じた。己の手にもその瞬間、痛みを感じる。
 そう、真名は自分自身で己を殴ったのである。
 それは呟きでも許さない。そういった感情が今の真名の心を支配していた。
 しかし、その感情も直に無くなり、魔拳の効力に抗う為に無感情になるが、わずかに魔拳に押されかけてしまった。
 己の役目として本来ならば全員行かせる訳には――――。
 いや、青銅の少年達だけでも行かせなければアテナ(沙織)は――――。
 いいえ、彼らを追いかけて……こ ろ し ――――。

 「…………!!」

 真名は切れ目の間から高く跳躍する。
 双魚宮の中に舞い戻り、素早く周りを見渡し、小宇宙で星矢達を探る。
 どうやら星矢達はデモンローズの坂を走っている様であった。
 星矢達はそれぞれの必殺技でデモンローズを蹴散らしていた。
 どうやらデモンローズの事を前もって教えられていた様である。
 それを感じ取り、舌打ちしたくなる気持ちと、安堵する気持ちの両方を感じて、なんとかやり過ごす。
 両方の気持ちに蓋をしないと、魔拳に負けてしまいそうになるからだ。
 そして、目の前に立つ黄金聖闘士達。
 これで良い。こうなったらもう、最後の手段だ。
 殺すのは嫌、自害も出来ない、精神力で勝つには後一押しないと無理の様だ。
 ならばとそう思い、懸命に今感じている気持ちのまま、ソレを伝える。


 □■□■□■□■□■□■


 「アイオリア……ミロ、シュラ…カミュ……。お願いがあります」

 「真名?」

 「このままではジリ貧です。だから」

 にっこりと笑顔で伝える事にしました。


 わ た し を こ ろ し て く だ さ い。


 声になったか、わかりませんでした。
 けれど、四人が目を見開いて驚いている事が分かります。
 私の言った事が伝わったのでしょう。

 「な、何を言っている」

 「そうだ!何を言っているんだ!?そんな馬鹿な事……!」

 「……教皇のやった事は」

 「え?」

 いきなり”教皇”という名を出した私に驚きの声をあげます。

 「確かに、悪い事をしていたでしょう。けれど、彼は彼なりに自身の正義で、この聖域を守っていました。私には出来ない事です」

 「真名……正気に戻って?」

 私は彼らの言葉にかまわず話を続けます。

 「許せとは言いません。むしろ許さなくても良いです。けれど、どうかチャンスを……生きる事の許しだけは与えてあげて下さい。それが、彼の罰になります。まぁ、言ってしまえば、生き恥を曝してでも生きろという事です」

 少し早口になってしまうのはこの際気にしないで頂きたいですね。

 「真名……」

 「そうそう、殺していただく時はココを、狙ってください。痛いのは嫌なので」

 ココとは額の事です。シュラの聖剣で首を切られた場合なのですが、例えですけど、ギロチンで首を切ると死の間際、心臓止まるまで生きて意識があるんですって。こっわ。
 なので、一思いに額を貫いてほしいですね。
 ふむ、攻撃しないのであれば、こちらから行きますか。

 「さて、では行きますよ!”元”魚座の黄金聖闘士真名。行きます!!」

 唐突に戦闘を開始したのでした。
 
 

 
後書き
すみません、本格的な戦闘は私には無理です……。
しかも星矢達を通すのが遅い!
本当に申し訳ありません。
まさかこんなに展開が遅く、長いとは思いませんでした。
次も戦闘ありですけど、どうなる事やらで……。 
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