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女神と星座の導きによりて

作者:草ナギ
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星38 アフロディーテ

十二宮最後の宮、双魚宮で立ちはだかるのは教皇によって幻朧魔皇拳を受け、洗脳された黄金聖闘士として星矢達の前に立つ真名。
 十三年前の真名しか知らない同じ黄金の四人、もしも彼女の実力が昔と変わらないのであれば、黄金聖闘士の中でも最強格の位置にある。
 警戒するのは仕方のない事である……が、彼女から攻撃を仕掛けてくる事はない。
 こちらをじっと見つめ、仁王立ちの如く立っている。
 
 「……来ないのですか?」

 真名はじっと、目の前に立つ動かない者達を見つめて静かにそう言った。
 ……動かないと言うより、”動けない”というべきか。
 何かの拍子に彼女に攻撃を与えて魔拳の効果が出てしまえば殺戮の限りを尽くしてしまう。
 それだけはさせてはいけない。
 昔、任務に赴く際は、黄金聖闘士の中でも徹底的に周りの被害、巻き添え等には気を付けていた真名。
 そんな彼女だから出来る事ならば犠牲を出したくない。
 そう思う黄金の四人だったが、しかし、睨み合うだけでは時間が経ってしまい、黄金の矢が刺さっている沙織嬢(アテナ)を救えない。ならば……。

 「星矢!」

 「あ、おう!」

 「瞬!」

 「は、はい!」

 「氷河」

 「はい!」

 「紫龍」

 「はい」

 「真名とアフロディーテは俺達で抑える。お前達は教皇宮へ、時間がない!」

 アイオリアがそう星矢達に言い放つ。
 
 「教皇ならば、もしかしたらアテナのみではなく、真名もなんとか出来るかもしれない!急げ!」

 「わ、わかった!」

 星矢が返事をした瞬間、黄金の四人が動く。
 それに反応したのはアフロディーテのみ、真名は目線だけで黄金の四人を見つめる。
 まるでそう来る事が分かっていたかの様に。

 「【ロイヤルデモンローズ】!」

 アフロディーテはロイヤルデモンローズを黄金の四人にそれぞれ投げつけ、薔薇が刺さるかという時にシュラは手刀で払い、カミュは凍気を使って凍らせ、ミロとアイオリアは左右に避ける。
 
 「そう来るのは分かっていた!【ロイヤルデモンローズ】!」

 避ける四人を見る前にアフロディーテは既にもう一度ロイヤルデモンローズを複数投擲。
 今度こそ当たるかという所で、四人はそれぞれ黄金聖衣に当たるように身体を捻る。
 
 「アイオリア、カミュ、ミロ!あの薔薇の香りを吸うな!瞬間的に毒が回るぞ!」

 薔薇が散る際はしっかりと鼻と口は手で覆い隠し、完璧に散り落ちるまで待つ。
 下手に散っている最中に薔薇の花粉等を吸ったら薔薇の毒にやられる可能性があるからだ。
 その瞬間を狙ったのかアフロディーテは一番近くに居たミロに狙いを定め、光速の蹴りをお見舞いする。

 「喰らえ!」

その蹴りをバク転の要領で避け、体勢を整えて透かさず、スカーレッドニードルでアフロディーテの身体の秘孔を突こうとしたが、アフロディーテもまた、それに気付いており赤薔薇をミロの指先に向けて放つ。
 
 「ロイヤルデモンローズ!」

 小宇宙を纏う赤薔薇に一瞬怯んだがロイヤルデモンローズに見せかけたモノである事に気付き、素手で払いのける。

 「くっ、フェイントか!」

 それにより隙が出来たミロの腹部にアフロディーテは光速の拳で殴りかかる。
 ミロも己の隙が出来てしまった事に素早く気付き、拳が腹部に当たる前にこちらも光速の手刀にて払い、払った反動を使いそのまま回し蹴りを食らわせる。
 
 「ぐぁっ!!」

 咄嗟に腕で防御するが、諸に蹴りを喰らい柱に吹き飛び、ぶつかるアフロディーテ。
 
 「……ディーテ」

 真名はアフロディーテに近付き、息をしているか確かめる。
 どうやら気絶しているだけの様だ。
 それだけ確認するとその場にまた佇み、こちらを見据えている。
 ここまで戦っておいてなんだが、実はミロは本気を出していない。
 今のアフロディーテは黄金聖衣を纏っていないからだ。
 もしも黄金聖衣を纏っていたならば、戦いは続行だっただろう。
 実力自体は互角なのだが、防御面に関しては圧倒的に不利なのはアフロディーテだ。
 ミロが本気で蹴りをぶつけていたのならば、今頃アフロディーテは腕の骨は折れ、その蹴りの威力により、絶命していた可能性が高い。
 だが、ミロはそうしなかった。
 アフロディーテが心から教皇に心酔しているのは知っている。
 ここで殺せば真名が受けた幻朧魔皇拳の効力も解除されるだろう。
 でも、それは出来ない。
 真名がそれを望んでいないからだ。
 この十二宮の戦いを見ていれば分かる。
 真名はこの戦いで出来る限り”死者を出さない様にしている”事は明白である。
 もし、真名が居なければ今頃は黄金聖闘士が”半分程死んでいた”事だろう。
 兵士達にも死者が出ていた可能性もあるのだ。
 その例が獅子宮女官の人質の件である。
 アイオリアはもう分かっていた。
 あの名前のない手紙を持ってきた伝書鳩が誰からの物で、女官の牢の場所を知っている兵士が居る。と、書かれていなければ殺して鍵のみを手に入れ、自力で探して回っていたであろう可能性がある事を。
 カミュも氷河との闘いで朽ちるだろうと思っていた。
 だが、この十二宮の戦いが始まる前日、カミュの元へ青薔薇、キュアローズが届いた。
 この時になって初めてカミュは真名が聖域に居る事を察した。
 しかし、何故キュアローズが送られてきたのかが分からない。
 手紙にも

 《テーブルにでも飾ってください》

 としか書かれていなかったからだ。
 後から知ったのだが、ミロから
 
 「昨日、伝書鳩が来てくくってあった手紙に《宝瓶宮の居住部屋のテーブルにある物をカミュと氷河に使いなさい》と書いてあった」

 つまり師弟で戦い、死に懸ける事が分かっていたという事だろう。
 真名は”死”を望んでいない。
 だからこそシュラの時も魚座の黄金聖衣を使い、紫龍に纏わせてシュラは紫龍に己の黄金聖衣を与える事なく、その命は助かっているのである。
 ここで死人を出せば想像上ではあるが、アテナも悲しむであろう。
 己の守護を与えている聖闘士同士の戦いだ、不本意極まりないかもしれない。
 だが、それ以上に悲しむのは真名であろうという事も予想は付くというモノ。
 今ならば分かる。真名は表でも陰でも色々と根回ししていた。
 やっている事は自分勝手であるかもしれない、偽善かもしれない、だが、それ以上に我慢できなかったのだ。
 自分の周りに居る人達が、自分の大切にしてきたモノが無くなるのが。
 だからなのだろう。
 魔拳を受け、アフロディーテが生きている事を知ると、そっけない感じではあるモノの、安堵していた。
 後は、星矢達をなんとか真名の横を通らせ、教皇宮に行かせるのみである。
 シュラが一歩前へ出る。
 
 「アイオリア、カミュ、ミロ。一つ言っておく、真名の後ろに回るのは俺がやる。お前達は正面のみで戦え」

 「な」

 「何を言っている?」

 「その前に!真名を相手に全員で仕掛けるのか!?」

 シュラは目線のみでアイオリア達を見つめ、返事を返した。

 「そうだ」

 「「「!?」」」

 「お前達は真名の実力をちゃんと見た事があるか?」

 その言葉に十三年前の真名を思い出す三人。
 そう、真名はふざけている様で思慮深い人で、周りの人々に優しかったし、幼かった自分達にも優しかった。
 修行にも厳しかった……だがその後、修行した分沢山の愛情をくれた。
 母や姉が居たらこんな感じだろうと思う程に。
 だからこそ真名を知る人々は彼女を”聖闘士の中でもっとも慈悲深い黄金聖闘士”と呼んでいた。
 だが、シュラを除く三人は真名の本当の実力というモノを知らない、見たことがないのである。
 真名が最強格であろうというのはアイオロスとサガが言っていたからだ。
 本人にも聞いたことがあるが
 
 「アイオロスとサガには負けますよ。でも、一発くらいはお見舞いしています」

 そう言っていた。
 つまり、十三年前は黄金聖闘士の中でも最強を誇っていた二人に負けるが、一矢報いる位の力を持っていた事になる。
 そのハズなのだが、シュラの雰囲気はそれにしては警戒し過ぎている気がする。
 戦闘事態彼女は十三年もの離脱をしていたハズで、ブランクがあるであろうと予想していた三人。しかし、シュラのこの警戒はなんだ?
 そう思い、改めて真名を見つめる三人。
 そこで初めて気付く。
 黄金の大きな小宇宙も内に秘めている様に身体から滲み出ている。
 まるで周りに被害が出ない様に抑えている様にも感じる。
 シャカとは違い、視覚を閉じている訳でもない。
 だが、彼女は……

 「真名は常に小宇宙を抑える様に過ごしている。本人の話では寝ている時も常に、らしい」

 「な、なんだと?」

 「つまり彼女は……」

 シュラはこくりと頷くと

 「シャカ以上の小宇宙を秘めている可能性がある」

 攻撃を与えてはいけない、その上に、シャカ以上の実力があるかもしれない相手にどう戦えば良いか。
 複数で挑まなければ、こちらが”ヤ”られるかもしれないのである。
 
 

 
後書き
十二宮戦ボス前の戦い相手はアフロディーテでした。
真名が戦うのを期待した方々すみませぬ!
戦闘描写が難しい!我が友人の言葉を頂かなければ書けなかったでしょう。
ありがとう!本当にありがとう!自慢の友人です。
さて次回、今度こそ、主人公の出番です。
果たしてどんな展開になるのか……。
私にもやっぱり分かりません。 
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