『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』
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十四話目
「必ず、部長さんと一緒に帰って来て下さい」
「ああ、もちろんだ」
イッセーは笑顔でそう言うアーシアに見送られて冥界へと向かう。
手の中に握るのは先程四季から渡されたスクラッシュドライバー。それ以外にもライザーと戦うための切り札は用意した。
何処か不安を感じながらスクラッシュドライバーとスクラッシュゼリーの二つへと視線を向ける。
あの時にビルドに変身した四季が使った物とは違うだけに、本当に大丈夫かと言う不安が湧いてくる。
(これだけじゃ無いんだ、だから大丈夫だ!)
何も出来なかった相手に一人で勝てるのかと言う不安が浮かぶ己を安心させるように心の中でそう叫ぶ。
「上手くいったみたいだな」
機能を下げるついでにスクラッシュドライバーに取り付けておいた盗聴器から聞こえて来た会話を聞いていた四季、詩乃、雫の三人。
場所はナデシコCの会議室、三人とも怪盗コスチュームで、だ。
盗聴器から聞こえる音が消えたことからイッセーは冥界へと転移したのだろう。流石に冥界と人間界を繋いでくれる程高性能な物は桐生戦兎の頭脳でも作れない。
「まあ、今回は結果待ちって所だな」
「大丈夫なの、四季の作ったスクラッシュドライバーを渡しちゃって」
「性能を抑えた劣化版だし、スクラッシュゼリーも破壊される時に使い物にならなくなる……計算上は」
「最後の一言がちょっと余計」
「妙に最後の一言が不安になるんだけど」
「流石にこればっかりは試すわけにはいかないからな」
そもそも、試すのに使うドライバーとスクラッシュゼリーを作る時間はなかったのだ。
「だったら、念の為にスクラッシュゼリーの回収のためにオレ達も冥界に行くか?」
「行くって、見つからないで行く方法はあるの?」
詩乃の疑問はもっともだ。分かりやすく言えば完璧な密入国をするといっているのだから、正面から堂々と移動するのは論外として、見つからない移動手段が理想的なのだが……
「一応、ダイヤルファイターとナデシコには冥界に移動する機能がついてるらしい」
思いっきりその手段はあった。
まあ、冥界を舞台に大きな戦いがある事もあるのだから、そんな時に加勢したくても移動手段がありませんでした、では話にならないからなのだろう。序でにナイトローグの時のように余計な敵まで参戦して居たら四季たちの加勢がなかったら危険過ぎるだろう。
そんな訳で今回はナデシコCの試運転、処女航海を兼ねての行動となった。そもそも、この馬鹿でかい宇宙戦艦がどこから発進するのかも確かめておきたいし。
現在はオペレーターもいないので十全に機能を発揮できないが、艦長として登録されている詩乃が艦長席に立ち、空いた席に四季と雫が座って運航する事になった。
格納庫の前方が開くと何処かにそのまま格納庫から上昇して行く。
「「「ええっ!?」」」
外の光景が見えた瞬間三人から驚愕の声が溢れる。
それも無理はないだろう街中の自宅の地下に有った地下格納庫だった筈が、何故か何処かの無人島から出撃していたのだから。
「いや、確かに街中、それも自分家の地下から発進させたら目立つだろうけど」
「あの格納庫はどこでもドアにでもなってるの?」
「でも、見つからないのは良い事だと思う」
既に何処ぞの猫型ロボットのひみつ道具レベルの施設だと改めて認識する三人で有った。
「兎も角、気を取り直して」
「ええ、目的地は冥界。ナデシコC。出撃」
こうして、前方に現れた魔法陣を潜りながらナデシコCは処女航海として冥界へと飛び立っていったのだった。
さて、冥界へと辿り着いて四季が貴族風の礼服に着替え、手持ちの隠しカメラを通じてナデシコCのモニターに映像を送りながら貴族の中に紛れ込むと丁度イッセーとライザーのゲームが始まろうとしていた。
イッセーの行動を警備の悪魔達が止めようとするのを他のリアスの眷属の木場、朱乃、小猫の三人が阻み、イッセーはリアス、ライザーとサーゼクスの三人がいる主賓席の前までたどり着く。
周囲の貴族がイッセーへと罵声を浴びせるのをサーゼクスが静まらせると、パーティーの余興としてドラゴンとフェニックスの一騎討ち、つまりイッセーとライザーの試合を提案する。
サーゼクスからは既に最後のチャンスは逃してしまったと告げられるが、イッセーはそれを分かった上で強引に覆す為に来たと答える。
あの時、勝てなかった相手と今更再戦して勝てると思っているのかと問われると、
「ええ、あの時のオレじゃないって事を見せてやりますよ!」
普通は誰もがたった数日で何が変わったのだと思うだろう。まあ、神器の事を考えればそれの覚醒によっては大きなパワーアップは測れるだろうが。
そんな周囲からの呆れとも嘲笑とも言える視線を受けながらスクラッシュドライバーを取り出す。
『スクラッシュドライバー!』
四季から渡されたドライバーを装着し、新たにドラゴンスクラッシュゼリーを取り出し、
「当てにしてるんだから、力を貸してくれよ……」
そんな事を呟きながらスクラッシュドライバーの装填スロットにスクラッシュゼリーを装填する。
『ドラゴンゼリー!』
「うおぉー! 変、身っ!」
『潰れる! 流れる! 溢れ出る!』
『ドラゴンインクローズドライグ!』
『ブラァ!』
気合の入った叫び声とともにイッセーは巨大なビーカーに包まれ、液体化した成分が全身を覆いスーツを形成し、最後に頭部から吹き出す液体が頭と腕の装甲を作り出し、その姿を多くの者の前で赤いクローズチャージ、否、『仮面ライダークローズD』へと変身してみせたのだった。
吹き出した液体が本来の青と違うのはスクラッシュドライバー自体が劣化版であるが故かは分からないが、本来青くなる部分が赤龍帝の名に相応しい赤に染まっている。
(クローズドライグって適当に名付けたけど、やっぱりクローズヴェルシュの方が良かったかな~?)
イッセーの変身シーンを眺めながらそんな事を一人考えていた。なお、音声はイッセー用の為に特別に用意したものである。
「ハハハっ! おいおい、そんな玩具がなんの意味があるって言うんだ?」
変身という派手な真似をしたイッセーに静まり返る中ライザーの嘲笑が沈黙を破る。
「なるほど、これはなかなか面白くなりそうだ」
そんな嘲笑を遮りサーゼクスの言葉が響く。
「兵藤一誠君。君がライザー君に勝った時には相応の対価を支払うとしよう」
「サーゼクス様!? 下級悪魔に魔王様が対価などと!」
「例え下級であろうとも彼も悪魔だ。それに、こちらからの頼みなのに対価を支払わないとは悪魔としての理に敵わない。……さあ、君は何を望むのかな?」
イッセーの使ったスクラッシュドライバーとスクラッシュゼリーに興味を持ちながらも、今は妹の為と自身の予定通りに自体を進めて行く。
流石にイッセーもグレイフィアからの伝言やこの言葉からサーゼクスの意図ができないわけがない。
金でも、絶対的な地位でも無い。
「それなら……」
リアスの方を指差すとイッセーは、
「リアス・グレモリー様を返して下さい!」
「良いだろう、それでは早速ゲームを始めよう!」
事前準備はできていると言った様子で試合会場に転移させられる。イッセーとライザーの二人。
急に試合を決められたライザーも相手が一度勝った相手なのだから、文句もないようだ。
先ほど使ったスクラッシュドライバーの事も甘く見ている様子で余裕そのものと言った態度だ。
「部長! オレには木場の様な剣技も無くて、小猫ちゃんの様な馬鹿力もないし、朱乃さんの様な魔力の才能もアーシアの様な治癒の力も」
そこで一度言葉を切って赤い怪盗の事を思い出す。
「あの赤いコソ泥野郎の様に強くも無い!」
(コソ泥じゃ無くて、オレ達は怪盗だ、怪盗!)
思わず叫んでイッセーの言葉を訂正したくなったが、此処は敵地と言葉を飲み込む四季であった。
(スクラッシュゼリー回収して帰るつもりだったけど、あの野郎、一発殴る)
「だけど、オレは貴女の最強の兵士になってみせます!」
本来ならば専用武器のツインブレイカーが現れるはずだが実は劣化版にはその機能は付けていない。その為に彼の神器であるブーステッド・ギアが現れる。
「力を貸しやがれ! ドライグ!」
『Welsh Dragon over boostr!』
試合開始と同時に己の片手を対価にして可能にさせた禁手を発動させた事で、クローズDのアンダースーツの一部、頭部と両腕が赤龍帝の鎧に変化する。
『凄いぞ! 10秒も持たないはずだったが、この鎧の力が有れば1分は持つ』
「1分か!? それだけあれば奴を殴り飛ばして、お釣りが出るぜ!」
『この鎧は持ってもそれ以上はお前の体持たない』
そう伝えながらも神器の中に宿る龍帝は理解していた。この鎧の力はドラゴンであっても、この世界のドラゴンのものでは無いと。
自分よりも強大な怪物の力の一部であると。
『(しかし、なんだこの力は? 初めてだぞ、鱗片だけで此処まで恐ろしいと感じた存在に触れるのは)』
この世界にはエボルトは居ませんが、フルボトルの成分を液化させた事による長時間の接触が原因なのかは定かでは無いが、ドライグはその力の持ち主の恐ろしさを正確に気がついて居た。
星を狩るエイリアン、ブラッド族のエボルト。宇宙レベルの消滅の力たるブラックホールを自在に操る怪物など、夢幻と夢幻ならば兎も角、それ以外の存在には太刀打ち出来る存在では無いだろう。
サーゼクス達魔王? 最悪、眷属諸共纏めて消されて終わりである。
何気にドライグの中での世界の強者ランキングに夢幻と無限の下にエボルト(想像態)がランクインした瞬間だった。
(さて、フェニックス対ドラゴン、フルボトルとしたらドラゴンの方が上だけど、どんな対決になるかな?)
後でイッセーを殴ることを心に決めながら逃走用に用意したフルボトルの一部、フェニックスボトルとドラゴンボトルを手の中に握りしめながら、四季はそう心の中で呟くのだった。
(まあ、劣化品とは言えスクラッシュドライバーを使わせてやったんだから勝ってくれよ)
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