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ソードアート・オンライン ー合わさる剣は2つの世界を一つにしてー「ある科学者とある剣士の物語」

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第八話「会合」

その夜はみんなで酒場で豪遊した。その帰りだった。俺を訪ねて例の家まで来たやつがいた。その者の名はヒースクリフだった。
「やあ、ジンくんにレイくん、いつも顔をあわせているが三人で話すのはこれが初めてかな」
「なんですか血盟騎士団の団長がなんのようです」
「ボス部屋発見の知らせは届いていると思う。そこでなんだか二人にキリトくんとアスナくんの様子を見に行ってほしい」
「なんで僕たちが?」
「実は二人は今最前線を抜けている。今のままではボス攻略に支障が出るあの二人の力が必要だ」
「それならあんたがいけばいいだろう。キリトさんたちだってなにか事情があって最前線から抜けてるんだろう。最前線の苦しさは知っている」
「やはり君はするどいボス攻略会議のときもそうだが、そうそう君の考案したスイッチ三段撃ちあれには驚いた」
「話をそらすな、俺達に血盟騎士団の団長自ら会いに来る、それ相応の要件があるはずだ」
「いや。わたしは、君に大いに興味がある。最初のボス攻略会議の時、あの時はまだプレイヤーは素人同然、それどころかレベルも低い。なのに君は、あの時点では攻略不可能級エネミー「アームライオン」を倒している。いったいどうやった?それからの働き、スイッチ三段撃ちの考案。ビーターの称号、剣神連合の組織。君のプレイヤースキルはずば抜けている。ジンくん。君は何者かね?」
「それを言うならあんただってそうだ、最初のユニークスキル使い。キリトさんへの勝利と獲得。血盟騎士団。俺はあんたの真似をしてみせただけさ」
「ふむ、私のやり方を盗んだというのか」
「そういうことだ。ああ、それとこの人とこの人とこの人。見たことあるか?」
「ん、このスクリーンショットのプレイヤー……」
「そうだ。俺が最初期から目をつけてるプレイヤーだ。いずれうちのギルドに加えるつもりさ」
ヒースクリフの目がそれを聞いて変わった。が、俺の目を見てすぐに、ふっとため息をついて声を上げて笑い始めた。
「なにがおかしい」
「はっはっは、くくく。そうかやはり君は私のやり方を盗んだ。ただの盗人というわけか」
「何?」
「そうだ、私もこの三人のことは前から目をつけていた。右から血盟騎士団三騎士「ラオ」「アルダ」「テオン」うちの手練れの中でも選りすぐりの剣士さ」
「まさか……っ!」
「ははは、いや盗人とはいえ、君の手腕には驚いた。君と私は似ているようだ。君は彼らが古流剣術の達人であることが剣裁きで見て取ったんだろう?」
「なっ!?」
「分かっているよ。君の剣の強さの謎、君は最初のボス攻略の時。いったことを忘れたかね?まさか君がSAOの根幹を作ったメンバーでそれも剣術の達人としてソードスキルのデザインに一役買っているとは」
「う、はは」
「だが君はその力でここまでのことを成し遂げた。これからの君の健闘を祈っているよ。そうだ、こんど決闘をしないか?私は君も血盟騎士団に引き込みたい」
「そうですか、いいですよ。その代わりなんでキリトさんとアスナさんが必要なのかそれだけ教えてもらえないか?」
「わかった素直に話そう実は殺人ギルド。ラフィン・コフィンが今水面下でキリトたちを狙っているというこの前の圏内事件の時キリトたちを殺しそこねたラフコフのメンバーが名声目当てで狙っている。血盟騎士団としては二人を今なくすわけにはいかない。彼らは99層攻略に必要なのだ。対人戦に特化した剣神連合ならあるいはラフコフの凶行を止められると思ってな」
「いいでしょう。俺とレイで二人の家にいってみます、ですがあくまで二人の休息の邪魔はしたくない。話はきいてますよ。クラディールとかいうラフコフのメンバーが血盟騎士団の幹部になりキリトさんを殺そうとしたようじゃないですかその時いっしょにいたメンバーがクラディールの凶刃にかかって死んでいる」
「なにもかもお見通しというわけか」
「一つ約束してください。攻略前にラフコフのアジトを突き止めてほしい。そして攻略組総出で殺人ギルドを無力化させる」
「なぜかね」
「今日ボス部屋直前まで俺のパーティが行きました、そこでラフコフに人質を取られたあげく襲撃されました。今回のボス攻略も同じ二の舞にはしたくない」
「いいだろう。私の方で調べておく」
「じゃあ、今日のところはお引取りを」
「ふ、どうやらあまり歓迎されていないようだ、だがね君がまさかこのゲームの開発者の一人とはね、やはり君とは一度戦ってみたい」
 ヒースクリフの後ろ姿は妙に不気味だった。
「ね、ねえ今の本当?」
「ん?」
「ヒースクリフ、あの人のやり方を盗んだとかって」
「は、嘘に決まってんだろ?」
「え?」
「だってそんな風に言わなければあの三人のプレイヤーを何故知ってるのかって問い詰められてた」
「え、え?どういうこと?」
「つまりな、この三人は俺が探していたあの剣術の達人たちなんだよ」
「え?あなたと一緒にこのSAOのソードスキルをデザインした?」
「そうだ。俺は奴らとは旧知の仲だ。そいつらがSAO内にいるとしたら、すでに頭角を現しているはず、ていうことで俺は、あの時、自分の素性をポロっと言っておいた。そしたら三人は俺にコンタクトを仕掛けてくれた。一緒に血盟騎士団に入ろうってね。俺は断った。そして逆に俺のギルドに誘った。そしたら奴らには何かしら決意のようなものが見えた。だからそのままにしておいた。そして今日なんで三人が血盟騎士団に忠誠なんか誓ったのか。あのヒースクリフってやつも相当何かあるってことさ」
「じゃあ、ジンはあんな人の真似で私たちを自分のギルドに引き込んだとかそういうことは決してないのね」
「ああ。まさか、俺はあんな奴の真似なんてしたことないぜ。俺が参考にしているのは歴史上の戦いにおける戦術とか軍隊の編成の仕方、うちの道場の弟子制度だよ。俺、実は新しく道場を作ろうと思ってて」
「なんだそうなんだ。びっくりしたよ。でも良かったジンはジンなんだよね。そうだよね。で、どんなところにするの?」
「なにが?」
「その道場よ」
「ああ、この平和な日本でも最近物騒だからな、戦そのものを教えようかと」
「どういうこと?」
「戦において集団での戦い。各種武器の扱いからの戦術の組み立て方。ゆくゆくは競技種目として戦道とかそういう形で全世界に発信したいもんだ、いくら平和憲法がある日本だってこのままだと平和ボケが過ぎるからな。このぼけた日本に喝を入れ申し候」
「あら、さすが私がホレた男!将来有望ですなあ」
「うん、まかせろ。ははは……まあ、それだけでこのギルド組んだわけじゃないんだけどな……」
「え?」
「俺な、始まりの町の時。一人の女の子と一緒だったんだ。その女の子は、ニーナ。明るくて運動神経のいいそんな女の子だ。事件勃発前、その数時間、俺はニーナと過ごした。俺はとても誇らしかった。自分の剣技をここまで披露できるこの世界。そしてそれを作った一員だってこと。ニーナは、俺を心底尊敬してくれた。俺も正直嬉しくてな。それでちょっと強いモンスターの出るエリアに入ったんだ。そしたら、前を通ってるパーティがモンスターに殺された。俺たちはただゲームオーバーになっただけだと思ったが、ちょっと強すぎるエリアに入り込みすぎたということで始まりの町まで帰ろうということになった。それが良かったんだが」
「ジン」
「そのあとだ、すべてひっくり返った。俺たちは、まさかのデスゲームに参加させられていた。そして俺たちの前を歩いてた。人は……実は死んでたんだ。そして今度は俺を責め始めた。ニーナはこんなひどい世界を創る片棒をかついだ自分を許しちゃくれなかった。そして最悪の事が起こった。彼女は気が動転して呼吸が困難になってそしてそのまま、カーディナルから自殺した。始まりの町にある唯一、空中都市の下の空が見えるコテージから身を乗り出して」
「そんな……」
「それからだ、自殺者が後を絶たなくなったのは、レベルや装備や予備知識が足りなくてエネミーに殺されていく人も増えていた。そんなことがあったから俺は子のギルドを作った」
「ジン。一ついいかな?」
「ん?」
「その人は、確かに気の毒だったけど。
ジンが、どれくらい人を救ってるか分かる?みんな、行き場がなかったの、こんなゲーム早く終わりにしたい。でも外には恐ろしいエネミーがうようよしてる。
食べなくても死なないけどお腹は空く。お金がなければ日々の食事さえままならない。自殺しかないんじゃないか、エネミーなんかに殺されたくないよ。そんな人たちにジンは、光を与えたんだよ」
「そう……なのか」
「ええ!何を隠そう、その一人が私だもの!」
「レイ。ありがとな」
「戦略や戦術、個人の技能、心構え。そういうものをあなたはこのゲームに持ち込んだ。でも一番は、ちゃんと焦らないで頑張れば、レベルは上がるし、そうすれば死ななくて済む。そしてこのギルドにはそれを教えて親身になってくれるあなたとみんながいる。私、あなたに最初に一番初めに声をかけてもらって本当に感謝してるのよ」
 レイは、少し涙ぐんだまま微笑んだ。
 夕焼けに映えるその風貌は、ジンをとても安心させた。 
 

 
後書き
見てくださってありがとう。次回作、乞うご期待! 
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