八条学園騒動記
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第五百十六話 本をなおしてその十三
「惜しんでもらえる」
「そんな風になりたいな」
「尊敬されたいとかはないけれど」
「それは俺もだ」
「やっぱり好かれるとね」
「それに越したことはないな」
「ええ、死んでからもね」
ナンシーは心の底から思って述べた。
「それがいいわ」
「そうだな、だからな」
「あんたも今言うのね」
「死んでからも惜しまれたい」
「そんな人になりたくて」
「死んで喜ばれる様な奴にはな」
今言っていることと逆にというのだ。
「絶対になりたくない」
「どうしようもない親戚の人やその人のお母さんみたいには」
「なりたくない」
「本当に反面教師ね」
「その母親が死んで俺は思った」
洪童はこれまた心の底から語った。
「死んでよかった、有り難うとな」
「そこまで嫌いだったのね」
「馬鹿息子を散々甘やかして何かあるとヒスを起こして喚いて喧嘩ばかりしていて一族の中を引っ掻き回していた」
そんな人間だったからだというのだ。
「死んで有り難うだった」
「これでもう害悪を撒き散らさないから」
「心から思った、しかし俺はな」
「そんな風にはなりたくないのね」
「何があってもな」
「だから本を読んでるのね」
「そうしている」
洪童はナンシーに強い声で語った、そこにある言葉は非常に強いものだった。
そうしたことを話して歩きながらクラスに戻った、すると程なく先生が来て午後の授業がはじまった。
本をなおして 完
2019・3・17
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