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夢幻水滸伝

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第九十五話 南洋の星達その六

「ここまでの霊力があれば」
「ここまで大きな霊力が集まった国は他にない」
 シェリルは強い声で言い切った。
「だからだ」
「それで、ですね」
「太平洋を統一した時は」
 シェリルはチュットに答えて述べた。
「必ずや」
「霊的なものを太平洋全域にですね」
「及ぼす様にしたい、そうすればな」
「太平洋全域の大きな力になりますね」
「勿論他の地域のものもだ」
 太平洋全域の霊的な力が備わっている場所の力をというのだ。
「太平洋全域にだ」
「及ぼしてですね」
「太平洋全域を守るべきね」
 こう言うのだった。
「是非」98
「そうですね、あとです」
 チュットはさらに言った。
「これから外に出たら」
「鹿だな」
 テレサはチュットの楽しそうな顔を見て述べた。
「あれを観たいな」
「ええ、可愛いからね」
「そうだろうか」
 テレサはチュットの今の言葉には懐疑的な顔で応えた。
「私はどうもな」
「テレサは嫌いよね」
「凶悪な連中ではないか」
 奈良の鹿達はというのだ。
「どうにも」
「それはね」
 チュットも否定せずに答えた。
「人に慣れていてね」
「弁当は奪う、煎餅を出せばしきりに催促をしてくる」
「紙でも何でも食べるし」
「しかも兵達がからかうとだ」
 冗談半分にそうするとだ。
「隙を見せた時に仕返しをしてくる」
「そうした生きものだから」
「実に凶悪だ」
 こう言うのだった。
「まことにな」
「ああ、連中はな」
 鎧と剣で武装したコボルトが言ってきた、黒い毛が実に犬らしい。ブルネイ出身の戦士モハメド=はリムだ。星は地角星であり鎧は神具のカヴァーチャだ、剣も神具でありアチャルパリスという全てを断ち切り持つ者の素早さも上げる剣だ。
「おいらから見てもな」
「凶悪だっていうのね」
「からかった兵隊の連中が悪いにしてもな」
 それでもというのだ。
「油断した時に仕返しとかな」
「凶悪なのね」
「ちょっとやばいやろ」
「あたくし様から見ても」
 小柄で褐色の肌、黒いショートヘアの少女だ。一見すると人間に見えるが実はセルキーで海豹の皮を背中の袋に入れている。
 地辟星のグエン=チー=ズーだ。サイオニックである持っている神具は敵の精神を攻撃する黒琵琶という楽器の武器とサイオニックの力である超能力を増大させ制御もする乾坤圏という腕輪の二つである。
「あの鹿達は」
「神の使いというが」
 このことはテレサもわかってはいる。
 しかしだ、テレサはそれでもと言うのだった。
「随分と横柄な神の使いだ」
「全く、神様と崇め奉るから」
 それでとだ、ズーも言うのだった。 
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