戦国異伝供書
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第四十二話 信濃の南その十二
「さすればな」
「織田家の力はかなりのものになりますな」
「うむ、だからな」
それ故にというのだ。
「あの者にはな」
「先んじますか」
「そうなる様にしていこう」
「ではこれからは」
「焦っては駄目じゃが」
それでもとだ、晴信はさらに言った。
「怠けることもな」
「せずに」
「そしてじゃ」
そのうえでと言うのだった。
「ことを進めていこう」
「そして我等も」
「家臣としてじゃ」
そのうえでというのだ。
「頼むぞ」
「それでは」
「そしてやはりな」
「長尾家については」
「わしも出来る限りじゃ」
「長くはですな」
「ことを構えたくはない」
「上洛を考えますと」
「そうじゃ、ただまた美濃の話をするが」
「あの国ですか」
「斎藤家は八十万石、美濃を確かに治めておる」
そうした状況だというのだ。
「そこに攻め入ってじゃ」
「そうしてですな」
「特に本城の稲葉山城はな」
「天下の堅城ですな」
「それだけに攻め落とすことはじゃ」
「容易ではありませぬな」
「策を使って美濃の有力な国人達を迎え入れても」
それでもというのだ。
「稲葉山城はな」
「肝心のあの城はですな」
「そう簡単には攻め落とせぬ」
「それは織田家も同じですな」
「じっくりと腰を据えてな」
「足場も固めて」
「そうして攻めぬとな」
そうでもしないと、というのだ。
「あの城はな」
「攻め落とせませぬな」
「だからじゃ」
それでと言うのだった。
「あの城はな」
「簡単にはですな」
「攻め落とせず」
そしてというのだ。
「長い時間がかかるわ」
「織田家が攻めるにしても」
「わしも長尾家との戦に時をかけるやも知れぬが」
「織田家もですな」
「美濃攻めには時をかけるであろう」
「ではその間に」
「わしが美濃を攻め取ればな」
「よいですか」
「さすれば近江に行く前にな」
「尾張の織田家を降し」
「あの者も配下にしてな」
信長、彼をというのだ。
「そうして進んでもよいしな」
「考えてみますと」
「稲葉山城はな」
「そう簡単にはですな」
「攻め落とせる城ではない、むしろな」
「簡単に攻め落とせば」
「その方が恐ろしいわ、当家でもじゃ」
優れた家臣を多く持つ武田家でもというのだ。
「あの城を攻め落とすにはな」
「はい、当家の忍の者達を使い」
昌幸が述べた、
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