夢幻水滸伝
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第九十三話 奈良会議その十一
「あの方は既にお会いしていますが」
「外交儀礼としてか」
「お迎えします」
「そうするねんな」
「かなりフランクな方ですが」
李のその性格も踏まえての言葉だった。
「それでもです」
「礼儀は礼儀か」
「しっかりしないといけません」
「その辺り自分らしいな」
「それが世の中、ひいては政というものなので」
それ故にというのだ。
「ですから」
「そこはか」
「しっかりとです」
まさにというのだ。
「お願いします」
「わかった、ほな着替えるな」
「どの勢力も正装で来ますし」
「各勢力のか」
「はい、例えばアメリカはタキシードです」
そちらになるというのだ。
「中国ですとあちらの」
「清の頃みたいにか」
「あの国のこの時代の服装はそちらなので」
清代のものだというのだ。
「髪の毛は辮髪ではないですが」
「髪型はちゃうか」
「それは違います」
太宰は中里に落ち着いた声で答えた。
「それまでの中国の髪形の髷です」
「あれやな」
「そうです、辮髪といいますと」
太宰はこの清代を象徴する髪型について話した。
「元々は北の遊牧民の髪形です」
「モンゴルとか満州族のやな」
「そうです、兜を被る時に汗で濡れない様に」
「ちょん髷と一緒の理由やったな」
「それで剃っていました」
「伸ばしてるところは邪魔にならん様に編んでな」
「そうしていました、あくまで北の遊牧民の髪形です」
中国に昔からあった髪型ではないというのだ。
「ですからこの世界ではです」
「特にか」
「はい、していません」
「中国の漢民族の髪形か」
「そうなっています、ですが服は」
こちらはというと。
「清代のもので」
「派手か」
「そうなっています」
「その辺りもわかったわ、こっちの世界はこっちの世界やな」
「そうです、ただ明代や宋代も入っていて水滸伝や三国志演義もです」
そうした趣もというのだ。
「あります」
「そうやねんな」
「そこはご理解下さい、あと先程お話したアメリカもタキシードですが」
それでもと言うのだった。
「南北戦争の頃の感じです」
「西部劇とかか」
「そうです、あの頃のアメリカの服です」
「スーツではないか」
「そうです、ジャクソン大統領やリンカーン大統領が着ていた様な」
太宰は自分達の世界のアメリカ大統領を例えに出した。
「そうした服惣です」
「そやねんな」
「あと南洋は各国の民族衣装です」
「それ派手そうやな」
民族衣装と聞いてだ、中里はすぐにこう思って口にも出した。
「あの辺りの民族衣装色や色使いが派手やしな」
「しかもそこで礼装となると」
「かなりやな」
「はい、実際にです」
「派手やな」
「目立ちます」
このことは事実だというのだ。
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