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八条学園騒動記

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第五百十三話 素晴らしきかな文学その八

「そうしていってな」
「憎んでいってね」
「挙句には殺したりな」
「取り返しのつかないことをしてしまうこともね」
「人間ならな」
 その心があればというのだ。
「どうしてもな」
「やってしまう場合があるわね」
「そう思うとな」
 本当にとだ、洪童はオセローがデズデモナ妻である彼女を殺してしまう場面を読みつつこれ以上はないまでに苦い顔で述べた。
「オセローは嘲笑えない」
「絶対にね」
「リア王もマクベスもな」
「誰もがね」
 それこそとだ、ナンシーも同意であった。
「それも凄くわかりやすいからね」
「いい勉強になるな」
「そうね、本当にね」
「この場合が学問か」
 洪童はこうも述べた。
「学校の勉強と違ってな」
「そうね、学問よね」
「学問はそれだな」
「ええ、学校の授業のことが勉強で」
「学問はそうしたものだな」
「世の中の色々なことを学んでいく」
「人間もそうだな、それで哲学もな」
 二人が避けているこちらもというのだ。
「学問で人間や社会についての学問か」
「そうなるわね」
「しかしな、こっちの学問はな」
「わかりにくいわよね」
「書いた人の造語やその人の解釈が出てな」
「そこから理解しないといけないし」
「やたらと難しいことを書くしな」
 それでというのだった。
「わかりにくいな」
「相当にね」
「そうだな、簡単に言わないのが哲学か」
「いや、わかる様に書かないと」
 それこそ誰もがとだ、ナンシーは言い切った。
「駄目でしょ」
「本来はそうだな」
「誰でもわかる」
 それこそというのだ。
「そうした文章でないとね」
「意味がないか」
「そうでしょ、お昼前にもお話したけれど」
「俺も言ったしな」
「造語を出して」
 そしてというのだ。
「何を言っているのか言いたいのかわからない小難しい文章を書いても」
「読んでいる人がわからないとな」
「意味ないわよ、そのわからない文章を理解出来たから自分は凄いとかね」
「読んだ人が思ってもな」
「わからない人が馬鹿とか」
「そういうのじゃないな」
「そんな誰が読んでもわからない文章は」
 そうしたものはとだ、ナンシーはさらに言った。
「何でもないからね」
「結局はそうだな」
「理解出来るかどうかはね」
 それこそというのだ。
「重要よ」
「本当にそうだな」
「その点シェークスピアはいいわよ」
「わかりやすいからな」
「しかも読みやすいしね」
「短めだしな」
「すぐに読み終わるし」
 読もうと思えばそれこそ学校の授業の合間にでも読んでも一日で読める、それだけの長さでしかないのだ。
「手軽でね」
「いい学問になるからな」
「哲学書よりもね」
 遥かにというのだ。 
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