戦国異伝供書
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第三十九話 信濃守護その十二
「だがそれでもじゃ」
「備えはですな」
「常にしておくものじゃ」
それでというのだ。
「そのうえでな」
「ことを進めるべきだからこそ」
「この度はじゃ」
まさにというのだ。
「次郎にも命じておる」
「そうなのですな」
「しかし大丈夫じゃ」
晴信は笑みになりこうも言った。
「源次郎は必ずじゃ」
「真田家全体をですか」
「説得してくれる」
そうしてくれるというのだ。
「そして上田を当家に引き入れてくれる」
「そうしてくれますか」
「あ奴は戦にとりわけ才を見せるが」
知勇兼備、まさに幸村にある様な言葉であるというのが近頃武田家において言われていることである。
「政も出来てな」
「話もですな」
「喋りは上手ではないが」
それでもというのだ。
「その誠意を存分に見せてな」
「相手を引き込む」
「そうした者だからな」
それでというのだ。
「あの者が行ったならな」
「大丈夫ですか」
「一門同士であるしな」
話す間が父や叔父、そして祖父だからだというのだ。幸村から見て。
「大丈夫じゃ、これで上田が領地になり」
「佐久を挟む形になり」
「佐久が容易に手に入る、そして村上家を牽制しつつじゃ」
その上田からというのだ。
「木曽や松本の方にもな」
「兵を進められますな」
「だからじゃ」
それでというのだ。
「ここは吉報を待つぞ」
「源次郎からですな」
「そうするぞ」
こう言ってだ、晴信は備えをしつつも幸村からの吉報が来ると確信していた。そうして今は甲斐にいるのだった。
第三十九話 完
2019・2・22
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