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戦国異伝供書

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第三十九話 信濃守護その七

「武田の家臣となって頂く」
「元々それを見極める為でしたし」
「それで殿は武田家に入られました」
「そしてその見極めの通りですな」
「ここは、ですな」
「それでじゃ」
 まさにと言うのだった。
「よい時だとも思うしな」
「それだけにですな」
「ここで、ですな」
「大殿を説得されますな」
「そしてお父上達も」
「そうされますな」
「是非な、誠に良い機会じゃ」
 幸村が思うにだった。
「ならばここはじゃ」
「是非にですな」
「上田に急ぎますな」
「そうされますな」
「そうじゃ、急ぐぞ」
 こう家臣である十勇士達に告げるのだった。
「これよりな」
「わかり申した」
「この忍道を使い」
「そうしてですな」
「一気に上田に行きますな」
「我等の足で忍道を使えば」
 それこそともだ、幸村は言った。
「ものの二日じゃ」
「それで上田に着きまする」
「下手に馬に乗るより速いですからな」
「だからですな」
「この度は」
「寝る時と食う時以外は歩き」
 これも彼等だから可能だ、その体力故に。
「そうしてじゃ」
「進んでいきましょうぞ」
「上田まで」
「是非」
「急いで」
「そして二日でな」
 上田に行く、こう十勇士達に言って実際にだった。
 幸村は上田に二日で着いた、そうして言うのだった。
「さて、二日で着いたしのう」
「城に入り」
「そうしてですな」
「ご一門の方々とお話をされますな」
「うむ、しかし元はわしの家であるが」
 上田の城はとだ、幸村はここで複雑な顔になってこうも述べた。
「そこに他の家の使者として入るとはのう」
「それも変わったことですな」
「戦国の世と言えばそれまでですが」
「思いもしないことですな」
「全く以て」
「そうじゃな、しかしここで一服するか」
 幸村は上田の景色を見つつこうも述べた。
「そうするか」
「ここで、ですか」
「そうされますか」
「そうじゃ、少しは休みも必要じゃ」
 それでというのだ。
「ここはな」
「少し休み」
「それからですか」
「城に入る」
「そうされますか」
「そうするとするか、ついでに飯にするか」
 休むことを兼ねてとだ、幸村は十勇士達と共に道の端に移ってそこで干し飯を食いはじめたがここでだった。
 彼の兄である信之が馬に乗って供の者達を連れて通りかかってだ、すぐに一行を見付けて声をかけた。
「源次郎ではないか」
「これは兄上」
「武田家に仕えておるな、今は」
「はい、それでなのです」
 幸村は兄にすぐに答えた。
「この度は武田家の使者としてです」
「甲斐から来たのか」
「左様です」
 こう兄に答えた、飯を食うのを止めて礼儀正しく話す。 
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