| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

獣篇Ⅲ

作者:Gabriella
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

53 人生フラグだらけ。

屏風の後ろに入り、私は着ていた隊服を一旦脱いで着流しを羽織り、あとで巻くサラシとバスタオルを持って大浴場へと向かう。幸いなことに、時間が時間だったのもあるのか、大浴場には誰もおらず、貸し切り状態だった。疲れを癒すにはもってこいの状況である。

先に念入りに体と髪を洗い、軽く簪で髪を結ってから、湯船に浸かる。暫くして体が暖まってから風呂を上がり、サラシを巻いてお気に入りの着流しを羽織り、部屋へ帰る。バッグから先程持ち帰った副長からの大量書類(ラブレター)を封筒から出し、ペンをセットしてから帰りに買ってきたおつまみをつまみながら、壁に背中を預ける。ある程度気のすむまでポリポリタイムを満喫してから、ペンを手に取り、書類を捌くことにした。書類を捌きながら副長の判子がいるものと、久坂の判子がいるものとに別けて、分けたものから順々に判子を押して行く。時々、双子(こどもたち)が泣くのであやしたり時にはミルクを作ったりして、なんとか3:00a.m.くらいまでには押さえ込んだ。分けた書類をそれぞれクリップで止めて、封筒にしまってからバックに詰め込み、明日の準備をしてから布団に潜り込む。晋助(となり)が寝ていると思って布団に入ったのだが、なぜか後ろを向いていたはずの晋助(やつ)が私の背中をhold onしてきやがつた。お陰で全然眠れやしねぇ。www次に双子が起きたときがチャンスだと思い、とりあえず不便だが寝ることにした。

***************

次の日の朝のことである。私はいつも通りの時間に起きて、いつも通り朝御飯をつくって食べさせ、真選組に出勤し、今日ほぼ徹夜で仕上げてやった書類を副長の部屋に提出しに行った。そして午前中の見廻りを済ませ、昼休みを挟んで午後の業務をしつつ、部屋で相変わらず書類の整理をしていると、ピアス式トランシーバーに着信があった。ボタンを押すと、総悟から出動願いが出ていた。何事かとリダイヤルすると、お疲れ様です。と言って沖田(かれ)が徐に話を始めた。

_「姐さん、今空いてやすか?…できれば姐さんに同伴してほしい案件があるんでさァ。」

_「…今は書類を片付けてたところだったから、空いてるっちゃ空いてるわよ?…で、どうしたの?」

_「今朝方に内の副長と見廻組の局長が一悶着起こしやしてねィ。それのとばっちりで万事屋の旦那が見廻組に逮捕されちまったんでさァ。…で、今オレが旦那の釈放手続きをしようとしてたとこなんですがねィ?…どっちにしろ姐さんに用事があるから呼んでくれィとのことで。そいで姐さんが来れば旦那を解放してやってもいいとか言い出す始末なんでさァ。…一緒に来てくれやすかィ?」

_「…それはドンマイとしか言いようがないけど…とんだ災難だったわね。…いいわ、今から行く。で、なんか持ってく必要な書類とかある?」

_「とりあえず姐さん本体だけでいいらしいですぜィ?…姐さんも大変ですねィ?」

_「そうね、大変めんどくさいわ。分かった。じゃあ、見廻組のどこに行けばいいのかしら?普通に受付でいいの?」

_「…多分そうでさァ。宜しくお願い致しやす。オレは旦那の解放を主にしますんで、姐さんは局長(ささき)に会いに行っててくだせェ。」


一応警察グッズと銃と警察手帳、剣とペンを持って沖田と一緒に見廻組方面へと向かう。しばらく歩くと出来立てホヤホヤの見廻組の建物が見えてきた。ちょっとどこぞの国際機関的なオシャレなガラス張りの建物である。早速石をぶつけてガラスを割りたい衝動に刈られるが、そこは頑張って押さえた。佐々木(あいつ)のお世話になりたくないからである。信女(むくろ)に会えるのは嬉しいが、そんな形でお世話になりたくはない。

中に入ると、推測通り受付嬢がスタンバっていたので、警察手帳を取りだし、彼女に見せる。

_「こんにちは、真選組の久坂と申します。今回そちらにお世話になった者がおりまして、その者の身柄を引き取りに参りました。」

_「あぁ、久坂様ですね。そしてお隣は同じく真選組の沖田様。承知いたしました。…あ、久坂様は来られ次第局長よりご面会のお願いがございますが…」

_「大丈夫ですぜィ?…姐さん。姐さんは佐々木局長のところへ行かれてください。オレは、身柄の解放が終わり次第先に戻りやすんで。では、」


と言ってそこで受付嬢がもう二人来て、私と沖田の案内を直々にしてくださるようだ。困ったな、これじゃあ逃げられないじゃないか。

複雑な行き方で案内された先に、立派な木の扉があり、その上部中央に、デカデカと「局長室」と書いてある。…なんて日だ。

そんな私の思いとは裏腹に、受付嬢は嬉々として(なぜそんなに嬉しそうなのかは理解しかねるが。)ドアをノックし、声を掛ける。

_「局長、真選組の久坂様をお連れしました。」

すると、お入りなさい、とあの例のネチャネチャした粘着質な声で答えがあった。うわー、超絶憂鬱である。

あれよあれよという間に案内された部屋にはいると、局長(ささき)がこれまた嬉しそうに私の方を見据えているではないか。思わずこの場から逃げ出したい気持ちに駈られたが、なんとか踏ん張って、押さえ込んだ。できることなら、今すぐ地球外(こくがい)逃亡を謀りたいが、あいにく、もうすでに時遅しである。正直、後悔の念しかない。
そんなことを考えていた時、佐々木(かれ)が先に受付嬢を手早く退散させ、要件であろうことを言うために口を開いた。
 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧