八条学園騒動記
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第五百十一話 図書館で学ぶことその八
「小難しい言葉を使うか」
「それで自分は頭いいっていうな」
「作品を語らずにか」
「自分を語っているのでしょうね」
その実はというのだ。
「結局は」
「あと書きで自分を語るか」
「そうした知識人の人もいるでしょうね」
「作品語れと思うがな」
「そこを勘違いしてね」
自己顕示欲を出してというのだ。
「やたら物々しいね」
「難しい言葉ばかり使ってか」
「それで書いているのよ」
「何というか嫌な文章だな」
「それで書く人もね」
その当人もというのだ。
「あまりいい人じゃないかもね」
「だからそこで自己顕示欲を出すか」
「そうなのかもね」
「そうか、どうもな」
「洪童としてはでしょ」
「そういう文章も人もな」
洪童はナンシーにどうかという顔で話した。
「好きになれないな」
「あんたはそうでしょうね、それでね」
「ナンシーもだな」
「そういう人は好きになれないわ」
「文章もだな」
「ええ、どうもね」
「そのあと書きはやたら三つの単語を出していたな」
その具体的な内容もだ、洪童は話した。
「英雄と賢者と売国奴だの聡明と勇気と惰弱とかな」
「最初に二ついいのを出して一つ悪いのね」
「そうした三つの言葉ばかりをだ」
まさにというのだ。
「やたら書いて作品よりもな」
「その言葉ばかりだったの」
「そうだった」
「何かね」
どうにもという顔になってだ、ナンシーは述べた。
「そうした三つの単語のセットばかりで」
「作品についてはだな」
「書いていない感じね」
「実際にそう思った」
「じゃあね」
「もう読んでもだな」
「本当に作品のことを書いていなくて」
肝心のそれがというのだ。
「それじゃあね」
「ナンシーも読んで仕方ないと思うな」
「作品は読んで」
それでというのだ。
「あと書きはスルーね」
「書いている奴の名前は覚えたからな」
「その人の名前を見たら」
「もう文章は読まないつもりだ」
「それがいいわね、ただ三つの言葉並べるって」
もっと言えば先にいいものを二つ、悪いものを一つ置くそれはというのだ。ナンシーは洪童に考えながら話した。
「明の太祖みたいね」
「朱元璋か」
「そう、あの人ね」
「皇帝になるまではよかった人だな」
明の太祖についてだ、洪童はこう述べた。
「そうだったな」
「それまでは凄くいい人でね」
「皇帝になるとな」
「粛清に次ぐ粛清でね」
「沢山の人を殺したな」
「挙句は言い掛かりみたいに言ってね」
ナンシーは明の太祖が引き起こした文字の獄の話もした。
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