八条学園騒動記
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第五百八話 ナンと海その十
「事実上」
「ええ、だってモンゴルから見ればね」
「下手に逆らったからか」
「そうしてきたから」
「従っても徹底的にやったか」
「そこまでやった国は他になかったわ」
このことは歴史にある、中国統治にしても実はその文化や宗教には手出しせず特権階級であってもモンゴル人にも法が適用された。
「事実上のやりたい放題まではね」
「モンゴルが怒ったからか」
「それで高麗側も止めてくれって言ってきたのよ」
その略奪や人攫いをだ。
「この二つだけはってね」
「それは言うな」
「けれどこうしたことはあくまで特例で」
それでというのだ。
「普段はね」
「穏健か」
「そうよ、十字軍と違うから」
このことは断じてというのだ。
「殺戮趣味じゃなかったから」
「そう言えばお前も温和だな」
「モンゴル人は温和よ」
そうした国民性だというのだ。
「元々ね」
「モンゴル帝国は違うと思うが」
「それでも逆らう相手に容赦しないだけで」
「従うならか」
「略奪しないから」
それが産業であってもだ。
「税を収めてもらうけれど」
「それも高くないか」
「程々だったみたいよ」
このことはモンゴル帝国の歴史を見ればわかることだ、この国の統治はそうした面でも寛容だったのだ。
「まあ逆らったらね」
「殺して奪い尽すか」
「そうしていたけれど」
「従うならか」
「そこまでしないから」
「高麗に対したみたいにはか」
「まあ洪童のご先祖様には悪いけれど」
それでもというのだ。
「そこまではね」
「しなかったか」
「本当にあくまでね」
「モンゴルは温和か」
「そうよ」
ダンに確かな声で話した。
「少なくとも今はね」
「というと昔は違うか」
「まあね」
そこは否定しないナンだった。
「それはね」
「やっぱりそうだな」
「そこは否定出来ないわね」
「だったら高麗でのこともか」
「フビライ様が激怒されたことはね」
このことはというのだ。
「紛れもない事実だし」
「そうだな」
「そう、だからね」
「今は温和でもだな」
「昔は容赦なかったことは」
まさにというのだ。
「否定出来ないわね」
「敵には無慈悲だな」
「特に下手に逆らった相手はね」
「モンゴルから観てか」
「そう、そうした国にはね」
実際にというのだ。
「一切容赦しないで」
「そうしてだな」
「徹底的にだったのよ」
「やりたい放題の感じでか」
「懲らしめていたっていうか」
あくまで当時のモンゴル帝国の視点である、ナンは別にそうしたことは考えてはいない。そうしたことを考えるタイプではないのだ。
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