八条学園騒動記
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第五百八話 ナンと海その一
ナンと海
ステラーカイギュウとオオウミガラスをベンチから観ながらだ、ナンはダンに対してあらためて言った。
「いやあ、草原にいた時とは違う癒しを感じるわ」
「それは何よりだな」
「海もいいものなのね」
「そうだな、しかし海はのどかなばかりじゃない」
「荒れたりもするわよね」
「荒れるとな」
それこそとだ、ダンはナンに話した。
「もうな」
「漁に出られないわね」
「荒れるとなれば船も港に帰るしな」
「それで海が収まってから」
「また漁に出るが」
「海が荒れると怖いのん」
「昔は沢山の人が死んだ」
荒れる海の中でというのだ。
「だから海の神様も荒々しい神様が多かった」
「そう言われるとそうね」
「日本だと須佐之男命だな」
「もう大きな子供よね」
この神の性格についてだ、ナンはこう評した。
「まさに」
「荒々しいな」
「子供の荒々しさよね」
「あの神にしろそうでだ」
そしてというのだ。
「海の荒々しさが神格化されている」
「それで琉球の神様も」
「そんな感じだ」
「そうなのね」
「海は急に荒れる」
「さっきまで静でも」
「大嵐になったりしてだ」
そうしてというのだ。
「多くの人の命が失われる」
「ううん、モンゴルの神様とは本当に違うわね」
ここでナンはこうも言った。
「というかモンゴルの海の神様ってね」
「いないか」
「だから草原の民よ」
それならというのだ。
「今は色々な星で海を持ってるけれど」
「昔は本当に草原の民だからか」
「モンゴルの神様には海の神様がいなかったのよ」
「考えれみれば当然だな」
「ないものに神様は宿らないからね」
「そうだな」
「ラマ教でもね」
この時代でもモンゴルで広く信仰されている仏教の一派である、この信仰は古くモンゴル帝国に遡る。
「海はあまり縁がないし」
「それで縁がなくか」
「そう、そしてね」
ナンはダンにさらに話した。
「私も内陸の方にずっと住んでいて」
「それでか」
「そう、ずっとね」
まさにというのだ。
「海を見たことなかったし」
「馴染みが薄いか」
「海の生きものもね」
こちらについてもというのだ。
「どうもね」
「そうなんだな」
「そしてね」
ナンはさらに話した。
「今見ているのも斬新よ」
「ステラーカイギュウもか」
「鯨とかカイギュウとかオオウミガラスとか」
それこそというのだ。
「中学卒業するまでもうね」
「図鑑やネットで観る位でか」
「この目で観たこともなかったし」
「それでか」
「海も見たことなかったし」
ナンはまたこの話をした。
「別世界にいるとも思うわ」
「俺には草原の方がな」
まさにとだ、ダンはナンに話した。
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