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巨人の花嫁

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第五章

「その様です」
「だから瓜二つなのですか」
「知らぬ者ですが」
 それでもというのだ。
「何処かで祖先が同じなのかも知れないです」
「そうですか。間違えて申し訳ありませんでした」
「いえ、お気になさらずに」
「この度のこと何とお礼を言えばいいか」
「お構いなく」
「そう言われてもです」
 礼儀はせねばならない、こう言ってだった。
「何かを」
「ではです」
 バディカンは姫がどうしてもというのでこう申しでた。
「私は妻を得るために旅をしております」
「それでこの国にも来られたのですか」
「はい、それではです」
「この度はですね」
「私も従者も独り身なので」
「奥方をですね」
「紹介して頂ければ」
「では。私は既に相手が決まっていますが」
 それでもとだ、姫はバディカンに答えて述べた。
「妹を貴方の伴侶に勧めましょう」
「そうしてくれますか」
「そして貴方にもです」
 姫はボグにも言った。
「失礼もしましたし」
 このことへの謝罪もあってというのだ。
「この国の独り身の娘であれば」
「誰でもですか」
「はい、妻にするのです」
 こう言うのだった。
「そうすることを許します」
「そうですか」
「はい、貴方がこれはという人を妻にするのです」
 こう言ってだった、バディカンに妹を娶らせボグには彼が思う娘と妻とすることを許した。
 するとボグは一人の後家を選んだ、姫は若い娘を娶ると思っていたので彼にすぐに何故後家を選んだのか尋ねた。
「どうしてなのですか」
「はい、妻はご主人に先立たれましたが」
 ボグは姫に彼女を妻に選んだ理由を話した。
「それでも子が多くその子供達を育てるのに苦労していると聞いて」
「それで、ですか」
「私が夫になり働いて」
 そのうえでというのだ。
「暮らしを楽にさせてやろうと思った次第です」
「そうなのですか」
「左様です」
「そこまで考えてるとは」
 姫はここまで聞いて思わず唸った、そしてバディカンは感心した顔で言った。
「流石だ、そなたならではだな」
「有り難きお言葉」
「ではその心でこれからも頼む」
「さすれば」
「若しあの時貴方を殺していたら」
 どうなっていたのか、姫もこの時わかった。
「私はこれ以上はないまでに後悔していました」
「はい、ではこれからは」
「あの様な軽挙はしない様に慎みます」
 姫もわかった、そうしてだった。
 二人の結婚を祝福した、父王に言われた通り妻を得たバディカンはこの国で幸せに住んだ。その傍らにはいつも白い牡牛の痣を守っている強く心優しいボグが控えていた。


巨人の花嫁   完


                 2019・1・13 
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