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巨人の花嫁

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第四章

「間違っても」
「見間違い様がありません」
「それは一体何時のお話ですか」
「五年前です」
 その時のことだというのだ。
「あの時のことは忘れません」
「従者はその時既に祖国にいました」
 バディカンは確かな声で言う姫に彼女以上に確かな声で答えた。
「では違いますね」
「しかし」
「他人の空似でしょう、それにです」
「それにとは」
「従者は我々とは外見が違うのです」
「それで、ですか」
「東から来た者達ですから」
 それでというのだ。
「元からこのカフカスにいた者ではなく顔立ちが違うので」
「だからというのですか」
「見分けがつきにくいのでしょう」
「ではあの賊と貴方の従者は」
「間違いなく別人です」
 バディカンはこれまた確かな声で言い切った。
「そう申し上げておきます」
「左様ですか」
「しかし。その賊は放っておけません」
 バディカンは自分の人違いに恐縮する姫にあらためて述べた。
「何とかしなければなりませんが」
「恐ろしく強いので」
「何も出来ないのですか」
「噂では村から離れた赤い実が成る山にいるそうです」
 そこにというのだ。
「私はその時私を賊から護ってくれた騎士達と共に追おうとしましたが止められました」
「だから姫様は攫われなかったのですね」
「そうです、そしてその騎士達は今は皆国教にいていません」
「だから賊を知っている者は姫様だけでしたか」
「そうでした、ですが賊は」
「何とかしたいですね」
「今もそう考えています」
 姫は強い声で答えた。
「心から」
「ではです」
 ここまで聞いてだ、バディカンは姫に言った。
「私は賊を成敗してです」
「娘達を救い出してくれますか」
「そうしてきます、ですから従者のことはです」
「はい、それではです」
「今日にでもこの国を去るつもりでした」
 ボグの難を逃れる為にだ。
「ですがそうした理由ならです」
「賊の征伐にですか」
「行って参ります」
 こう言ってだ、バディカンは難を逃れることが出来たボグと共にその村の近くにある赤い木の実が成る山に入った。そして賊の棲み処を見つけてだった。
 賊を成敗した、そのうえで娘達を助け出した。攫われた娘達は皆無事だった。
 娘達を救い出した二人は彼女達を連れて王宮に戻り姫にことが終わったことを伝えた、するとだった。
 姫は驚いてバディカンとボグに言った。
「非常に強い賊でしたが」
「倒してきました」
「そしてです」
 ボグが姫に話した。
「賊はその顔を見ますとどうも」
「貴方と同じ国の生まれですか」
「はい」
 このことが間違いないというのだ。 
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