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巨人の花嫁

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第二章

「そこに白い牡牛の痣があります」
「わかった、では私もそこを守ろう」
「そうして頂けますか」
「家臣を守らずして何が主か」
 バディカンは魚を食いつつボグに真面目な顔で言った。
「それに私はいつもそなたに助けてもらっている、今もだ」
「この魚ですか」
「釣ってもらってだ」
 そのうえでというのだ。
「食べさせてもらっているのだ、焼いてまでしてもらってな」
「それでなのですか」
「そなたの忠義と誠実さは強さに勝る」
 ボグのそれにというのだ。
「その様な者を守らずしてどうする」
「有り難きお言葉、それでは」
「これからもな」
「宜しくお願いします」
「ではな」
 バディカンはボグに満面の笑顔で応えた、ボグの顔も笑っていたが屈託がなく邪気のない笑顔であった。
 その彼がだ、ある日だった。
 二人が立ち寄ったある国の姫を見てこんなことを言った。
「よい姫君かと」
「この国の姫がだな」
「大層美しいですね」
「そうだな、だがだ」
「だがといいますと」
「まずは会ってだ」 
 そしてというのだ。
「あの者がどういった者かな」
「知ってですか」
「そのうえでだ」
「お決めになられますか」
「人は外見だけでわかるものか」
 バディカンはこれまでの旅で自分達を騙したり化けたりして不意打ちや寝ている時を襲おうとした悪魔や賊と幾度も戦ってきた、危うい時も多かったがいつもボグの力もあり乗り切ってきて今に至るのだ。
「果たして」
「そう言われますと」
「そなたも心当たりがあるな」
「はい」
「だからだ」
「人を外見で判断されず」
「よく話してだ」
 そのうえで、というのだ。
「決めたい」
「左様ですか」
「妻に向かるにしてもな」
「では」
「そうだ、これからだ」
「あの姫様と合われますか」
「そうしたい」
 こう言ってだ、バディカンは国の役人に自分達の身分を明かし姫と会いたいと話した。王子となると役人も無下には出来ず。
 姫と会うことが出来た、姫は確かに美しかったが。
 それでもだ、バディカンと共にいるボグを見てだ。
 一瞬だが嫌悪と侮蔑の色を出した。ボグは気付かなかったがバディカンは気付いた。そうしてバディカンと話に入ったが。
 そこでだ、姫は自分と向かい合って卓に座って話しているバディカンのすぐ後ろに控えているボグに対して尋ねた。
「貴方は随分お強そうですね」
「そう言って頂けますか」
「はい、ですが」
「ですがといいますと」
「どの様な強い方にも弱点がおありですね」
 素っ気ないがよく聞くと侮蔑と殺意に満ちた声で言うのだった。
「左様ですね」
「まあそう言われますと」
「貴方にもですか」
「弱みはありまして」
「ではその弱みは」
「はい、背中の付け根、腰のそこにです」
 ボグは姫にも誠実に述べた。 
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