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八条学園騒動記

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第五百七話 無抵抗その六

「俺には無理だ」
「私もよ」
 ナンもこう言った。
「絶対にね」
「自分でもそう思うな」
「そんなことはね」
「本当にそうだな」
「私は馬に乗ってゲルで暮らしていないと」
 そうした生活でなければというのだ。
「駄目だから」
「遊牧民の生活でないとか」
「そう、駄目だから」
 暮らしていけないというのだ。
「宮殿の中で暮らすとか」
「そして自由のない暮らしはか」
「絶対に無理だから」
「だから君主にはなれないか」
「日本の天皇陛下とか琉球の国王陛下とか」
「あの方々の様な生活はか」
「何があっても無理よ、広い草原の中で羊や馬と一緒に暮らす」 
 こうした生活こそがというのだ。
「私にとっては一番いいわね」
「それじゃあ今はどうだ」
「今も充分楽しいわよ」
 日本でも学園生活もとだ、ナンはダンに答えた。
「馬に乗ってゲルで暮らせているから」
「だからか」
「逆に言えばこの二つがないと」
「御前は暮らしていけないか」
「ちょっと以上にね」
 そうだというのだ。
「無理ね、チンギス=ハーン様も宮殿で暮らしておられなかったから」
「ゲルの中か」
「フビライ様の頃は違ってきていたけれど」
「それでもモンゴル人はゲルか」
「あそこで暮らしていたから」
 ただし今は都市生活者も増えていて農業も行われている、モンゴル人も銀河の時代になり随分変わったのだ。
「今もよ」
「ゲルにいたいか」
「ずっとね、本当に宮殿にいてこうした場所にいつもお付きの人が大勢とか」
「暮らしていけないか」
「水族館に行くことはよくても」
 好きな場所に行ってもというのだ。
「そんな自由とは無縁の生活遊牧民には出来ないわ」
「遊牧にもルールがあるだろう」
「あってもずっと自由よ」
 君主の生活より遥かにというのだ。
「草原にいたらいつも解放感があるし」
「解放感のあるなしか」
「琉球王家にはないでしょ」
「ある筈がないな」
 即座にだ、ダンはナンに肯定の返事で答えた。
「あの方々には」
「そうよね」
「流石に日本の皇室よりはずっと緩やかだが」
「日本の皇室は別格だからね」
「あそこはまたな」
 それこそというのだ。
「別格にしてもな」
「君主には自由はない」
「生活自体が仕事、公務だ」
「ぞっとしないわね」
「まだ独裁者の方が遊べる」
 この時代ではサハラに多かった、群雄割拠で多くの国家が興亡する中で独裁者も多く出て来たのだ。
「権限が集中するから仕事は大変でもな」
「権力を使ってね」
 権限を集中させて得たそれをだ。
「そのうえでよね」
「そうだ、贅沢もな」
「出来るわね」
「文字通り酒池肉林の贅沢もだ」
「お酒にご馳走にハーレムに」
「そして宮殿もだ」
 そうした権力者の贅沢を楽しめるというのだ。 
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