戦国異伝供書
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第三十五話 天下一の武士その二
「だからじゃ」
「確かな人がいてこそですな」
「国は守れますな」
「それが武田様のお考えですな」
「人が国でありますな」
「優れた者が揃ってそれぞれ充分な働きをしてな」
そうしてこそというのだ。
「やはりな」
「国は守れますな」
「堅城よりも人ですな」
「それが武田様のお考えですな」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「その考えわしはじゃ」
「その通りだとお考えですな」
「殿も」
「左様ですな」
「その通りじゃ、しかしお会いしてな」
その晴信にというのだ。
「どの様な方か見極めたい」
「実際にお会いせねばですな」
「どういった方かわからないので」
「それで、ですな」
「この度は」
「そうじゃ、お館に向かうぞ」
晴信が居しているそこにというのだ。
「今からな」
「わかり申した」
「それではです」
「これよりそちらに向かいましょう」
「お館に」
「それではな」
こう言ってだった、そのうえで。
幸村は甲斐の国を進んでいった、そしてだった。
館の前まで来た、この時彼も十勇士達も気付いていなかったが。
晴信は館の己の間で山本に言われていた。
「遂にです」
「その者がだな」
「館の前に来ました」
「そうか、ではな」
「はい、間もなくです」
山本は強い声で述べた。
「館の門に来ますので」
「だからだな」
「人が来れば会うと答えられて」
「そしてじゃな」
「お会い下さい」
「わかった、ではな」
晴信も強い声だった、そうしてだった。
幸村が門の兵達に話をし兵の一人が晴信に言ってきたならば彼は会うと答えた。そうしてであった。
晴信と幸村は会った、そこでだった。
幸村は一度頭を下げて挨拶をしてから顔を挙げて名乗った。
「真田源次郎と申します」
「真田家の者じゃな」
「はい」
その通りだとだ、幸村は晴信に答えた。
「この度父に武田家にお仕えするようにと命じられ」
「ここまで来たか」
「左様です」
こう晴信に答えた。
「その為に」
「それは真田家の考えか」
「その通りです」
「では真田家は当家につくか」
「いえ、まずはそれがしがお仕えし」
「わりの器を見るか」
「それもありますがそれがしは父に言われました」
幸村は淀みなく答えていった。
「武田様をお助けし王道を歩んでもらう様にせよと」
「王道をか」
「はい、無駄な血を流さぬ」
「戦で人を殺めてもか」
「それは戦なら仕方ないこと」
幸村はそれはいいとした。
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