夢幻水滸伝
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第八十七話 青葉城の会見その五
「協同で」
「特に棟梁を立てないで」
「三人一緒でやっていくの」
「それでどだ」
こう提案するのだった。
「とりあえずは」
「ううん、私達三人共人の星だし」
「星の格も大して変わらないし」
「それじゃあね」
「三人一緒でなの」
「そだ、誰か天や地の星の人がいれば別だったが」
その者に棟梁になってもらっていたというのだ。
「そうした人もいないだからな」
「ううん、じゃあとりあえずはね」
「三人で新選組みたいにやってくだ」
「新選組って」
宮子は宮沢の今の言葉にすぐにどうかという顔になって反論した。
「最初の頃のよね」
「確かだまだ浪士組と言ってただ」
「そうだったわよね」
「その頃の話だ」
初期の新選組は指導者である局長が三人いたのだ、今の宮沢達と同じく。
「芹沢鴨、新見錦、近藤勇だっただ」
「それは私も知ってるけれど」
「例えとしてはだか」
「だってすぐにでしょ」
「粛清あったわよね」
千歳もこう言った。
「そうよね」
「何かクーデターだったみたいだ」
宮沢は千歳にも答えた。
「近藤勇の」
「芹沢鴨が粗暴だから天誅を下したんじゃなくて」
「そだったみたいだ」
芹沢鴨は確かに酒乱の気があったそうだがそうした短所だけでなくおおらかで分別も弁え子供にも好かれていたという、それなりに人望もあった様だ。
「勤皇派の芹沢が邪魔だと思われたみたいだ」
「近藤勇と新選組の上にいた会津藩の殿様に」
「そだったみたいだ」
言うまでもなく彼等は佐幕派である。
「そんで酒で酔い潰させられてだ」
「暗殺されたのよね」
「そだ」
「それじゃあ余計によ」
「例えとして悪いだが」
「それじゃあ私達が殺し合いするみたいじゃない」
千歳は宮沢に眉を顰めさせて反論した。
「だからね」
「この例えはよくないだか」
「止めるべきよ」
絶対にという言葉だった。
「あとローマの三頭政治もよ」
「一回目と二回目があっただな」
「どっちも最後は殺し合いになってるから」
だからだというのだ。
「こっちも駄目よ」
「カエサルとポンペイウス、オクタヴィアヌスとアントニウスでね」
宮子はその殺し合った者達の名前を述べた。
「やっぱりそうなってるわね」
「だからこうした場合歴史的な例えはアウトでしょ」
「殺し合いになってるから」
「そだか、じゃあ止めるだ」
その例えはとだ、宮沢も答えた。
「それなら」
「そうした方がいいわよ」
「その例えはね」
今度は二人で宮沢に言った。
「新選組もローマの三頭政治も」
「どっちもあれだから」
「特に新選組は殺伐としてるだ」
宮沢が見たところそうであるのだ。
「やたら仲間内で粛清や切腹があるだ」
「そういえばそうかしら」
「そうよね」
千歳も宮子も宮沢の新選組論に納得している顔で顔を見合わせて話した。
「士道不覚悟以外にも」
「これ内部闘争?って話多いわよね」
「さっき出た芹沢鴨だってそうだし」
「山南敬助も伊東甲子太郎もね」
「どれも何か裏がありそうな」
「そんな話ね」
「おら近藤勇は聖人君子ではないと思ってるだ」
宮沢は局長から話した。
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