八条学園騒動記
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第五百六話 イッカククジラの牙その七
「普通にな」
「そうなのね」
「それでだが」
さらに言うダンだった。
「これが結構美味らしい、確かスーパーでも売ってるぞ」
「オオウミガラスのお肉が」
「卵もな」
「ううん、気付かなかったわ」
ナンはダンのその話に眉を顰めさせ腕を組んで述べた。
「それは」
「そういえばナンは鶏肉は食わないな」
「食べない訳じゃないけれど」
それでもと言うのだった。
「食べるのは羊肉がいつもだから」
「だからか」
「鶏肉あまり注目してないわ、あとお魚もね」
こちらもというのだ。
「当然カイギュウもね」
「ステラーカイギュウもか」
「食べると美味しいとは聞いてるけれど」
それでもというのだ。
「食べたことないわ」
「そうなのか」
「ええ、あと蛸って怖いっていうし」
「今何て言った」
蛸は怖いと聞いてだ、ダンはナンに何を言っているといった顔で返した。心からそう思っているのがわかる顔だった。
「蛸が怖いか」
「人を殺すんでしょ」
「ジャイアントオクトパスか」
何十メートルもある蛸だ、星によってはこんなかつては幻想のものだったクラーケンの如き蛸も存在している。
「あれは案外簡単に捕まえられるぞ」
「いや、何でもミズダコとかいう蛸が」
「あれは酢蛸か刺身にすると美味い」
「いや、食べものなの」
「蛸は食べものだ」
ダンははっきりと言い切った。
「紛れもなくな」
「だから怖くないの」
「ミズダコの何処が怖い」
ダンは本気で反論した。
「一体」
「いや、海で人襲うんでしょ」
「そうだったのか」
「いや、ダン海育ちで知らないの」
「そんな話は初耳だ」
ダンは言い切った。
「ミズダコが人を襲うなぞな」
「この前本で読んだわ」
「蛸は蛸壺を出せばだ」
それでというのだ。
「簡単に捕まる」
「ミズダコも」
「それで酢だこか刺身だ、カルパッチョもいい」
「そうして食べるの」
「琉球人も日本人も食べている」
「じゃあアイヌ人も」
「日系の国家の人間ならそれこそだ」
まさにというのだ。
「蛸はな」
「怖くないのに」
「というかミズダコは人を襲うのか」
「殺すこともあったらしいわ」
「信じられないな」
ダンはナンに真顔で言葉を返した。
「それはな」
「そう、けれどね」
「本でそう書いてあったのか」
「ダンも蛸の本読んだことあるでしょ」
「図鑑が家にかなりある」
「そこに載ってなかったの?」
「大きさや体重と写真とだ」
それにと言うのだった。
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