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八条学園騒動記

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第五百六話 イッカククジラの牙その三

「だからよ」
「嫌いか」
「正直会いたくないわ」
「そうしたアザラシか」
「他のアザラシは好きだけれど」
 それでもというのだ。
「特にバイカルアザラシはね」
「それは淡水生だな」
 ダンはバイカルアザラシと聞いてすぐに答えた。
「寒帯にはいない」
「けれど好きなのよ」
「アザラシの中でも一番か」
「そうなのよ」
 こうダンに話した。
「私はね」
「そうなのか」
「あの丸い身体つきが好きなのよ」
「ずんぐりむっくりのか」
「愛嬌があってね」
「大人しいしな」
「ヒョウアザラシと違ってね、若しあのアザラシがお空を飛んだら」
 そのヒョウアザラシがというのだ。
「どうなるか」
「怖いな、確かに」
「空飛ぶ猛獣よ」
「俺の家の水族館にはいないが」
「ヒョウアザラシいないの」
「他のアザラシ達はいるが」
 それでもというのだ。
「専用のコーナーが必要だからな」
「他の生きもの襲うから?」
「リアルでペンギンや他の種類のアザラシを襲う」
「まさにリアル猛獣ね」
「寒帯のな、シロクマと同じ地域に棲息している星もあるが」
 それでもというのだ。
「シロクマとも戦える」
「そんなに強いの」
「シロクマが泳いでいる時に襲い掛かる」
「それは凄いわね」
「勿論トドやセイウチより強い」
「どんな猛獣よ」
「だから俺の家の水族館でもいない」
 飼育していないというのだ。
「専用のコーナーが必要で飼育も危険だからな」
「それでなのね」
「二百年前に水族館を開いてからな」
 それからというのだ。
「一度も飼育していない、シャチは飼っているが」
「シャチの方が怖いでしょ」
「ヒョウアザラシもシャチには負ける」
 流石にというのだ。
「シャチに勝てるのはマッコウクジラ位だ」
「あの鯨だけって」
 マッコウクジラと聞いてだ、ナンもこう言った。
「シャチどれだけ強いのよ」
「モビィーディッグにも負ける」
 幾つかの惑星の海に棲息している大型のマッコウクジラだ、全長百メートルに及び身体の色が白い個体も多い。
「流石にな」
「モビィーディッグって」
「メルヴィルの小説だな」
「去年読んだわよ」
 ナンはその小説について答えた。
「中々読み応えがあったわ」
「読んだのか」
「ええ、面白かったけれど」
 ナンはここで微妙な顔になってダンにこう言った。
「最後がね」
「主人公以外死ぬな」
「バッドエンドよね」
「自然の猛威を書いた作品でもあるからな」
「その後観た映画じゃ船長さん引き返して終わったけれど」
「モビィーディッグを見てもだな」
「そうしたけれどね」
 それでもというのだ。
「原作はバッドエンドなのね」
「実はな」
「結局モビィーディッグ倒せてないし」
 メルヴィルの原作ではそうである、尚前述の鯨の名前の由来も彼のこの小説からであることは言うまでもない。 
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