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戦国異伝供書

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第三十二話 青から赤と黒へその十五

「感慨が出るであろうな」
「間違いなく」
「それがしも思い返すと」
 高坂も言ってきた。
「何かとあり過ぎた位です」
「死ぬ思いを幾度をしてもこうして生きている」
 馬場は目を閉じて述べた。
「奇跡の様な話ですな」
「しかしそれは奇跡ではない」 
 内藤の言葉だ。
「その証に我等はここでに集っています」
「全く以てその通りじゃわしなぞじゃ」
 山本はここでその口を大きく開けて笑って話した。
「色が黒く小柄で一つ目、しかもびっことじゃ」
「何かとですか」
「嫌われる、この姿故にな」
 こう山形にも話した。
「何処にも仕官出来なかった、それがじゃ」
「お館様は違い」 
「軍師として用いて下さり」
「そしてですな」
「大名にもなれた、女房も迎えてじゃ」
 到底と思っていた二つのことも出来てというのだ。
「子も出来た」
「それもですな」
「殿がおられてこそじゃ」
 まさにというのだ。
「全てな」
「そうしてですな」
「そうじゃ」
 山本は山縣に応えさらに話した。
「ではこれからはな」
「そのこともですな」
「話そうぞ」
「では二つの家で」
 直江が武田家の赤と上杉家の黒を共に見つつ言った。
「これより話をしましょう」
「ではな」
「その様にしましょう」
 信玄と謙信も応えた、そのうえで。
 両家の者達は話に入った、そこで茶が来たが謙信は茶を飲んでその茶について微笑んで述べたのだった。
「茶もまた」
「美味いな」
「酒もいいですが昼はです」
「茶じゃな」
「酒は夜です」
 その時にというのだ。
「飲むもので」
「今はじゃな」
「茶を」
 この様にしてというのだ。
「飲みましょうぞ」
「ではな」
「飲みつつお話をしましょう」 
 織田家の話から武田家と上杉家の話になった、この話もまた聞く者達にとっては実に面白いものだった。


第三十二話   完


                  2019・1・1 
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