八条学園騒動記
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第五百四話 露出とファンタジーその十一
「そう思うとね」
「自殺はだね」
「するものじゃないわよ」
決して、というのだ。
「お母さんの話を聞いて思ったわ」
「人間やっぱり自殺は駄目だね」
「宗教ではそんなに否定していない宗教もあるけれどね」
ただこの時代では肯定している宗教はほぼ存在しない、キリスト教は中世以上に戒めている程である。
「あたしとしてはね」
「残った人が悲しむから」
「自殺する人って自分が死んでも誰もって思ってるかも知れないわ」
自分が死んでも誰も悲しまない、残念と思わないと考えているというのだ。
「けれどそれはね」
「間違いだね」
「相当な悪人か屑でないと」
それこそというのだ。
「絶対に誰かいるわよ」
「死んだら悲しむ人がだね」
「そう、絶対にいてね」
それでというのだ。
「自殺したことを残念に思って悲しむから」
「そうしたことも考えたら」
「逃げてもいいのよ」
「それで難を逃れて」
「その後でね」
「また立ち上がればいいんだね」
「そうよ、逃げるのは駄目かって」
この言葉はというと。
「ケースバイケースよ」
「逃げてもいい場合もあるね」
「そうよ」
まさにというのだ。
「本当にね、何でも逃げるなじゃないの」
「逃げないととんでもないことになる時は」
「逃げてもいいっていうか」
「逃げないと駄目だね」
「あのね、理由もなく人を殺したりする奴のところにいられる?」
ジュリアはあえて極端な例を出した。
「いたらどうなるのよ」
「殺されるね」
「そうでしょ、殺される位ならね」
「そこから逃げるべきだね」
「とんでもない奴とか出来事ってあるのよ」
世の中というものにはだ、世の中が全て平穏であるということはこの時代においても有り得ないことだ。
「そこから逃げないと」
「無駄死にだってあるね」
「そう、本当にサイコ殺人鬼を見たら」
ジュリアはまたあえて極端な例を出した。
「逃げないとね」
「自分が殺されるね」
「そこで逃げるなって言う奴は」
「馬鹿だね」
「理由もなく人を殺す奴からは逃げる」
ジュリアはまたこう言った。
「確か中国の古典でもあったわね」
「あっ、孟子だね」
「そうだったかしら、とにかくね」
「とんでもない状況からは逃げる」
「命あってよ、だからね」
「自殺する位なら逃げろ」
「あたし誰にだってもこう言うわ」
ジュリアはその声をさらに強くさせて述べた。
「そうしてね」
「自殺はだね」
「したら駄目ってね」
「そう言っていくんだね」
「ええ」
その通りだというのだ。
「そうするわ」
「それがジュリアの信念ってことだね」
「さっき言った通りにね」
否定いないと言うのだった。
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