八条学園騒動記
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第五百四話 露出とファンタジーその十
「お母さんが二十三歳の時にね」
「その人が自殺して」
「もう二十年だけれど」
「今もなんだ」
「時々その人のことを思い出して」
そして、というのだ。
「悲しくて残念な気持ちになるってね」
「お母さんが言ってたんだ」
「そう、だから自殺はね」
「絶対にすべきじゃないね」
「ええ、そうしたことも考えて」
残される家族や友人の気持ち、それもというのだ。
「生きないとね」
「駄目なんだね」
「だって、幾ら辛くてもね」
「生きていれば何とかなるから」
「逃げてもよ」
「コナンの作者さんもかな」
「ええ、死ぬ様な病気だったかもって言ってたけれど」
それでもというのだ。
「やっぱりね」
「最後の最後までだね」
「生きるべきだったのよ、看病疲れも」
これもというのだ。
「もうね、幾ら辛くても」
「自殺だけは思い留まって」
「そしてね」
そのうえでというのだ。
「生き残って」
「それからだね」
「例え看病に疲れてもその人が亡くなっても」
看病の介なくだ。
「お酒を飲んでもいいから」
「逃げてもだね」
「逃げられる限りね」
そうしてというのだ。
「そうして」
「何とか自殺をしない様にして」
「また戻ればいいから」
逃げた後でというのだ。
「それでね」
「だからだね」
「自殺だけはね」
まさにというのだ。
「しないことよ」
「ジュリアの信念だね」
「ええ、それを信念かっていうとね」
「そうだよね」
「否定しないわ」
こうジョルジュに答えた。
「本当にね」
「やっぱりそうだね」
「お母さんのお話を聞いてね」
「そう思ったんだ」
「若しもよ」
ここでだ、ジュリアは眉を顰めさせてそのうえでジョルジュに話した。
「あたしが実際に身近な人が自殺したら」
「その時はだね」
「余計にそう思うでしょうね」
「自殺だけは駄目だって」
「ええ、何日か前にお話してた人が急にとか」
ジュリアはその自殺のケースについても話した。
「子供の頃から知っている人とか」
「そう思ったら」
「本当にね」
ジュリアは暗い顔で述べた。
「どれだけ嫌か」
「家族やお友達がそうなったら」
「あのね、本当に残った人はどうなるの?」
「その人が自殺して」
「どんな気持ちになるのよ」
ジュリアは今度はその目を怒らせた、そうしてそのうえでジョルジュに対して語るのだった。それは純粋な怒りだった。
「一体」
「さっき話した通りにね」
「辛いし悲しいね」
「あのね、それでその人のお墓に行ったら」
「どうしても自殺したってことが頭にあって」
「どれだけ苦いか」
その気持ちがというのだ。
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