夢幻水滸伝
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第八十三話 江戸っ子その十四
「おいら達も江戸を手に入れてな」
「そうしてだな」
「まずはこの辺りを勢力圏にしてな」
そうしてというのだ。
「そこからこの世界を救おうと思っていたんでい」
「そうだったのか」
「ああ、それはわかるよな」
「言われるとな、当然の流れだ」
この世界ではとだ、日毬も答えた。
「それもな」
「そうか、じゃあな」
「それならだな」
「こっちも話が早いな、しかしな」
「突然の話でだな」
「正直驚いてるぜ」
幸田もとだ、日毬に答えた。
「おいらもな」
「そうか、しかしな」
「しかしか」
「それならな」
「江戸城に入りか」
「棟梁になるさ」
「ちょっと吉君いいのかい?」
麻友は日毬と話を進める幸田に真剣な顔で問うた。
「お話がどんどん進んでいくけれど」
「ああ、日毬ちゃんは腹の底が奇麗でな」
「それでなんだね」
「嘘や謀略は言わないからな」
「この話信じるんだね」
「ああ」
その通りだと言うのだった。
「おいらもな」
「そうなんだね」
「私は三河譜代、代々の旗本の家の出だ」
武士だとだ、日毬も言った。
「だからだ」
「嘘や謀略はですか」
「しない、今も父上達は胸を張れる仕事をされている、私もだ」
日毬自身もというのだ。
「剣道をしている、この世界では剣客だ」
「だからですか」
「剣道は心の鍛錬も行うのだ」
「心も」
「それで嘘や謀略なぞはだ、政には必要であろうが」
それでもというのだ。
「私自身はだ」
「使われないですか」
「そうしたことは出来なくなった」
倫理観、自身のそれからだというのだ。
「そうなったからな」
「だからですね」
「誓って言う、若し私が嘘をついているというのなら」
その時はというと。
「遠慮なくこの時のことをだ」
「お話すればですか」
「いい」
麻友に毅然とした目で答えた、その目は済み切っていた。
「天下にな」
「そうすればいいですか」
「私としてはな、だからだ」
それでと言うのだった。
「ここで信じられないならな」
「もうこの場で話は終わるぜ」
幸田も言ってきた。
「あんたに帰ってもらっておいら達はな」
「別の場所で旗揚げをしてか」
「あんたと戦うぜ」
こう言うのだった。
「いいな」
「そうだな」
「だからな」
それでと言うのだった。
「私が信じられないのならな」
「今ここでだな」
「私を帰らせることだ、それでだ」
「これからだな」
「どうする、江戸城に来るか」
自分を信じてとだ、日毬は幸田達に尋ねた。
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