夢幻水滸伝
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第八十三話 江戸っ子その十三
「星の人だよね」
「おいら達と同じ気配を感じるよな」
「強い気をね」
「それだよ、それでだよ」
「吉君はわかったのね」
「それとな、江戸の状況からな」
このことからもとだ、幸田は麻友にわかったのだと話した。
「この人が誰かな」
「吉君はわかったんだね」
「そうなんだよ」
こう麻友に話すのだった。
「おいらはな」
「そうなんだね」
「ああ、それでな」
「今からだね」
「被りものを取るっていうからな」
「わかったよ、じゃあね」
麻友も頷いてだ、それでだった。
女は被りものを取った、すると整った顔で赤い目の黒髪の少女の顔が出た。幸田はその少女の顔を見て言った。
「ああ、日毬ちゃんか」
「こちらの世界には先に来ていてだ」
「江戸城の主になったそうやな」
「そうだ、そして今は武蔵を手中に収めてな」
「相模、伊豆攻めてるな」
「知っているか」
「調べたんだよ、こっちでな」
幸田は日毬に笑って話した。
「これからどうしようかって思ってな」
「私と戦うことを考えていたな」
「おっ、それに答えないといけねえかい?」
「構わない、言うことはだ」
それはとだ、日毬は笑って言う幸田に答えた。
「別にいい」
「そうなんだな」
「わかっているからな、それでだ」
「ああ、どうしておいら達のところに来たか」
「そのことを話しに来た」
「一人でかい」
「秘かに江戸城を出てな」
そのうえでというのだ。
「来た」
「本当にお忍びで来たんだな」
「そうしてきた、それが何故かわかるな」
「ああ、大事な話をしに来たんだよな」
「江戸、そしてこの世界のことについてな」
「やっぱりそうか」
「そうだ、私は今は勢力を順調に拡大しているが」
それでもとだ、日毬から言うのだった。
「しかしだ」
「それでもだよな」
「行き詰まりを感じている、それでだ」
「星のモンであるおいら達を仲間に加えたいか」
「その為に来た、それでだ」
「それで?」
「貴殿は私より星の位が上だ」
だからだと言うのだった。
「だからだ」
「まさかと思うが」
「そのまさかだ、貴殿に棟梁の座を譲りたいのだ」
このことを日毬から言うのだった。
「そうしたいが」
「まさかな」
「そうよね」
二人は日毬のその言葉を受けてお互いに顔を見合わせた、そのうえで二人で話した。
「松尾さんだったわよね」
「ああ、苗字はな」
「松尾さんから申し出て来るなんて」
「思わなかったな」
「そうよね」
「攻めて来るつもりだったか」
日毬は二人のそのやり取りを聞いて言った。
「やはりそうか」
「ああ、もう隠すことはないと思うから言うぜ」
幸田は日毬に向かい合って答えて。
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