龍天使の羽撃き
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マスダイバー殲滅作戦開始5分前。
有志連合軍旗艦プレーローマMSカタパルト内部。
『プレーローマ、微速前進』
艦長代理である葵の声が艦内に響く。
『MS隊発進用意』
「ARROWS、出撃用意よし」
『モノクロームナイツ全機出撃用意よし』
カンヘルのコックピット内でサイドモニターを展開する。
インダストリアル7から出港する純白のディーヴァ級宇宙戦艦。
有志連合軍の旗艦だ。
『ゲートまで1000。カタパルト回転』
ゴゴン…と揺れる。
僅かな慣性と共にカタパルトが回転し始める。
『ミーティングでも言った通り、本作戦は作戦内容が漏洩している前提で進められる事が有志連合幹部議会で決定されている。故に初手を除いて大規模な戦略は無いに等しい。
各チーム、タッグ、ソロの戦術で対応せよ』
『なぁヴォジャノーイ。俺なんかが乗っていいのかこの船?』
俺の後ろのエレリアが愚痴る。
「お前は頼りになる。何より、自分の関わった機体だ。信じてるぞ」
『愛の告白かい?』
「友愛も愛だろう?」
するとドッと笑いが起こった。
モノクロームナイツの面々も含め、全員がサイドモニターに映る。
「お前ら、作戦前だぞ…」
『アンタが笑わせるから悪いのよヴォジャノーイ!』
リズの姉御…。
『キリト! 僕も愛してるよー!』
『お、おう? ありがとうユージオ、俺も愛してるぜ親友』
『『『『『『はぁ!?』』』』』』
お、モノクロームナイツ女性陣からブーイング。
キリト…御愁傷様。
『落ち着けバカ共! ゲートまで20! 19!』
カウントダウン。
そして…。
『ゼロ! ゲート突入!』
視界が光に包まれる。
光が止むと、モニターに小惑星が映る。
他のモニターには有志連合の機体が。
俺達が最後……いやこれキョウヤわざとだな。
『こちら、有志連合軍旗艦プレーローマの艦長代理カトラス。これよりマスダイバー殲滅戦を開始する。
作戦の都合上、本艦の上部を上、前方を前とする。
諸君、チャンピオンからありがたい御言葉だ。よく聞け』
葵め…丸投げしたな…?
キョウヤの言葉に奮起したダイバー達が雄叫びをあげる。
『ハッチオープン!MS隊発進!』
「第一MSデッキ解放!」
正面のハッチが開き、正面に小惑星を捉える。
そして左右にはディーヴァ級本来のカタパルトが見えている。
俺が居る場所は、本来ならフォトンブラスターキャノンが装備されている場所。
「カンヘル・アーマディア!出るぞ!」
脚部拘束具を外し、スラスターを吹かして微速前進。
右を見るとちょうどサイドのカタパルトからキリトのストライクノワールカスタム・インカーネイト・アームドとアスナさんのストライクルージュ・アームドが出撃していた。
俺の後ろからエレリアのアシュトレト、メティのアーマードライトニング、サンディのアーマードヘルメシエル、シリカちゃんのアーマードハルート。
キリトの後ろからユージオのアストレイカスタム・ブルーローズ、アリスのレギルスカスタム・ノブリスラヴェリテ。
アスナさんの後ろからシノンさんのケルディム、リーファのストライクフリーダムカスタム・リベルテ、リズの姉御のバルバトスカスタム・ミョルニル。
計十二機。これがプレーローマの戦力。
ここにその他のトップフォースが加わり、中央本隊は正面突破を行う。
全員が本隊で、全員が露払いだ。
陣形は敵に対し凹型で凸の短いY字陣形。
そしてY字の凹の中に俺とシリカちゃん率いるアーマード隊。
つまり俺らが先鋒! 銀翼突撃章が欲しいくらいだ。
キョウヤから広域通信が入る。
カメラを望遠モードにすると要塞からMS隊が出てくるのが見えた。
その全機が、暗い光を纏っていた。
『こちら旗艦プレーローマ。敵に対しミサイル攻撃を行う。当たるなよ』
プレーローマのミサイルハッチが開く。
『ミサイルハッチ全開。発射まで10…9…8…7ヒャァ我慢出来ねぇゼロだぁ!』
「ふざけてる場合か!?」
プレーローマから発射されたミサイルが有志連合軍の上を通りマスダイバー軍に迫る。
マスダイバー軍は余裕の構えだ。
ブレイクデカール機の力なら、艦艇のミサイルでも防げるのだろう。
だがブレイクデカールは機体の破損は直せるが、何かが挟まっていたりすると直せない。
あと分離合体機も分離しているのは破損と見なされない……はず。
ミサイルの中のトリモチがブレイクデカール機を捉える。
『全員! 今のうちだ!アーマード隊突撃!』
トリモチで固まった敵機の間を抜けていく。
遥か前方、カンヘルを追い越し先行するアーマードライトニング、アーマードヘルメシエル、アーマードハルート、その他の可変アーマード隊。
『可変アーマード隊隊長のシリカです! 皆さん撃ってください!』
敵の中央に潜り込んだ可変アーマード機から雨のようにトリモチミサイルが放たれる。
「非可変機隊! サーカスの時間だぞ!」
応! と喧しい返事と共に非可変機がトリモチミサイルをばらまく。
全身を覆うように…アームドアーマーDEやバインダー、その他腕部や脚部にプラ板を引っ掛けて装備した多量のミサイルユニット。
トリガーを引くとユニットから航跡が伸びる。
俺が撃ったミサイルも非可変機隊が撃ったミサイルもそれなりに当たった。
“それなりに"だ。
プレーローマから広域通信。
『現在ブレイクデカール機の四割五分が行動不能。
以降諸君の奮戦を期待する』
後続の左翼部隊、右翼部隊、そしてキョウヤ率いる中央本隊もトリモチで固まったマスダイバー先鋒と接触。
行動不能のブレイクデカール機を無視して進む。
こちらもミサイルユニットをパージする。
「エンゲージ!」
GNソードⅤは抜かない。
「意思よ貫け!【ビスト龍爪拳】!」
光の抜き手がブレイクデカール機を貫き爆散させた。
これこそが、俺達が習得した心意。
≪壁殴り≫の末に得た物。
抜き手や拳でイモータルオブジェクトを穿ち続けた産物。
『効いている! 彼に続け!』
キョウヤもウィングブレードに光を纏わせ敵機をきる。
マギーのラブファントムのサイスがビームとは違う輝きでもってブレイクデカール機を切り裂く。
タイガは…うん。言うまでもないな。
中央を高速機で強引に突破しつつ左翼と右翼で包囲。
内部と外部から攻める。
宇宙は三次元だが、人間の認識は二次元的だ。
包囲されたマスダイバーはその耐久性がなければ既に総崩れだっただろう。
心意、連合軍の士気、プレーローマの援護。
それらがあり、中核チームは割とすんなり要塞までたどり着けた。
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