夢幻水滸伝

「それで小田原とか鎌倉はまだだったな」
「ってことは」
「おう、そっちに一旦行ってな」
　そうしてというのだ。
「江戸を離れるのは嫌だけれどな」
「それは一時のことだからだね」
「あっちに移ってな」
　そうしてというのだ。
「旗揚げするかい？」
「相模や伊豆でだね」
「そうするか」
「そうだね、相模は豊かだっていうし」
「横浜とかがあってな」
「じゃあね」
「川崎はもう日毬ちゃんが手に入れたらしいけれどな」
「小田原がまだだったらだね」
「あそこの城が戦国時代のそれみたいにでかかったらな」
　惣構えの巨大な城ならというのだ。
「だからな」
「あのお城に入るんだね」
「そうするのも手かもな」
「江戸対小田原だね」
「おいら生粋の江戸っ子だがな」
　それでもというのだ。
「いざとなったらな」
「江戸を出ることもだね」
「仕方ないと考えてるぜ」
「戦略ってやつだね」
「それだよ」
　麻友にすぐに答えた。
「まさにな」
「そうなんだね、じゃああたしもね」
「ついて来てくれるか」
「あたしは吉君の幼馴染みで彼女なんだよ」
　だからだとだ、麻友は幸田に笑顔で答えた。
「だからね」
「それでだっていうんだな」
「当然ついていくよ、足手まといにならない様にね」
「悪いな、しかしな」
「小田原に行くことはだね」
「ちょっと考えるか」
　そのうえでというのだ。
「あの城を取られたらその時はな」
「また別の城だね」
「上総か下総に行って」
　そしてというのだ。
「あそこを拠点にするか」
「小田原でなかったらだね」
「あと水戸だな」
　この街も候補に入れた。
「あそこの水戸城とな」
「水戸の街だね」
「あそこを拠点にしてな」
　そのうえでというのだ。
「江戸と戦うか」
「そうも考えているんだね」
「まあどっちにしても江戸を手に入れないとな」
「はじまらないだろうね」
「そうだよ、まあ二日か三日考えてな」
「それでだね」
「決めるか」
「それじゃあね」
　二人でだ、こう話してだった。　
　幸田は麻友と共にこれからどうしていくのか考えだした、江戸を出るかそこで何処を拠点にするかは何処がいいかだ。
　そうしたことを考えで二日経った時にだった、ふと。
　屋敷に客が来た、幸田は風呂の後で酒を飲もうとしたところで門の外に頼もうという声を聞いて言った。