龍天使の羽撃き
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13
「諸君。今日集まって戴いたのは他でもない。マスダイバーとブレイクデカールの件だ」
「その前にヴォジャノーイ。きちんと灯りを付けたらどうだ?」
ゲンドウポーズのヴォジャノーイにキョウヤが突っ込む。
「っはー! 空気読めよキョウヤ。そんなんだからお前はいつまでたっても…いや言うまい」
ヴォジャノーイがコンソールを弄ると、部屋に灯りがついた。
場所はARROWSが所有するディーヴァ級宇宙戦艦プレーローマの会議室だ。
集まった面々はGBNのトップランカーだ。
ヴォジャノーイ、キリト、アスナといったシビルジャッジメンターはもちろん、キョウヤ、ロンメル、シャフリアール、タイガ、マギー…。
いわゆるトップフォースのリーダー級の会談だ。
ヴォジャノーイが席を立つと、スクリーンの前に立った。
「まず、今回集まってもらったのは運営の意志ではない。
もちろん外部追跡班も無関係。俺の独断で集めさせて貰った」
ヴォジャノーイがホロウィンドウをタップする。
スクリーンに【Anti Breakdacal Union】の文字が浮かぶ。
「先日のフォースバトル、つまり公式戦においてブレイクデカールが使用された。
ここに居る者なら知っているだろう」
ヴォジャノーイの言葉に皆がうなずく。
「だが残念な事に、証拠がない。これは我々外部追跡班も困っている。
だが、それは些細な事だ。重要な事は、敵が回復能力を持ちつつあるという事だ。
そうだな? ロンメル」
「ああ。その通りだ。倒しても倒しても、復活する」
「だそうだ。これに対して、現状我々には打つ手がない」
沈黙。
「訳でもねぇんだなこれがー」
と突然ヴォジャノーイが口調を崩した。
「現在、再生能力持ちのブレイクデカール機を倒す唯一の方法。それはインカーネイトシステムだ」
出席者が驚きの表情を浮かべる。
「インカーネイトシステム。この世界において感応波や脳量子波を再現するためのシステム。
その過程で生まれたバグ技である心意。
確認を取った所、インカーネイトシステムの命令は何よりも優先して処理される。
それはカーディナルシステムの基本コンポーネントに刻まれた命令だ」
再びホロウィンドウを弄る。
スクリーンに図が表示された。
GBNにおける処理優先度の図だ。
その最上位にインカーネイトシステムが置かれている。
そう、ダイバーの生命維持より上だ。
「これが通常の処理優先度だ。対してブレイクデカールを使用すると…」
ダメージ計算の欄の上に、ブレイクデカールが割り込んだ。
「こうなる。だが見て欲しい。ブレイクデカールが介入した優先度だが、それでもなおインカーネイトシステムは最上位だ」
ダイバーの生命管理より下のブレイクデカール。
生命管理より上位のインカーネイトシステム。
「故に、俺は心意同盟を発足したいと考えている。ABUはその隠れ簑だ」
そこで手が上がる。
「意義あり」
挙手したのは、狐耳のエキゾチックな女だ。
「シャフリ、どうした」
「以前心意はみだりに使わないという事を決めた。それは非常事態だからしかたないとしよう。
だがモラルではなく、実際問題心意の使用は運営が事実上制限している。そこをどうするつもりだ」
本来GBNに必殺技というシステムは存在しない。
なぜ今それがあるかと言えば、インカーネイトシステムを封じるためだ。
システムに巨大な負荷を与えるインカーネイトシステム。
その負荷を防ぐため、心意の予兆を感知した瞬間に、心意が発動する前に機械的に書き換える。
それが、GBNの必殺技システムの本性だ。
「わかっている。故に俺とタイガは機体を使わず、それでいて心意を鍛える方法を編み出した」
「うむ。その通りだ」
「ヴォジャノーイ、タイガ。その方法とはなんだ」
ロンメルが問う。
「壁殴りだ」
「「「「「「「は?」」」」」」」
「壁殴りだ」
後書き
有志連合は壁殴り愛好会になりました。
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