前世の知識があるベル君が竜具で頑張る話
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まえばらい
目が覚めると、ベートさんに抱き枕にされていた。
なんだかおかしな夢を見た気がする。
寝る前にあんな本を読んだからだろうか。
それにしてもあの女の人は誰だったんだろうか。
あんな綺麗な人には、僕は会ったことがない。
そういえば、『僕』はまだ僕のなかに居るんだろうか。
居るなら色々聞いてみたい気がするなぁ。
「ん……」
あ、ベートさんも起きたみたいだ。
「ベートさんそろそろ放して…」
「んー……」
「にゅあっ!?」
舐められた!? ベートさん今僕の顔舐めたよね!?
「んぅー………」
ってまた舐めてるし……。
もしかしてベートさん寝ぼけてる?
いまならいけるかな…
そっとベートさんの髪に手を伸ばす。
わぁー…もふってしてる……。
よーしよしよし! ここか!? ここがええのんか!?
「おい…テメェ何してやがる」
あ……起きてた…。
「えーと……その……よ、よーしよしよし!」
仕方ないこのままなで回そう。
と思っていたらベッドから蹴落とされた。
「きゅぴぃっ!?」
背中痛ぁ!?
「ぅー……気付いたら抱き枕にされてたんですからこれくらいいいじゃないですか…不公平ですっ!」
「知るか」
横暴な…。
「ベル」
「なんですか?」
「お前、昨日枕元にあった本どっから持ってきた」
「ゅ? あれなら昨日シルさんから借りましたよ。お給料を断ったら代わりにって」
「そうか…シル・フローヴァ…か」
ベートさんは窓を開けると、遠く聳えるバベルを見上げていた。
「チッ……気に入らねぇ」
「ベートさん?」
「はぁ…メシ行くぞ」
「はい」
ベートさんの部屋から出て、階段を降りようとした時だった。
「ベル、先行っとけ。ちょっと用事思い出した」
「わかりました」
side out
二時間後。ロキの私室。
「で? これがそのグリモアかいな」
ロキがパラパラと本を捲る。
「あーあ…見事に真っ白。発動しとるわ」
この場に居るのはロキ、フィン、リヴェリア、ガレス、ベートだ。
「ほいで?」
「ベルはシル・フローヴァから受け取ったと言ってた。」
「あー…シルちゃんか。うん…取り敢えず何も見ぃひんかったことにしよう」
「おい。ロキ」
「ベート。シルちゃんはあかん。あれはオラリオのパンドラボックスの一つや」
「あん?」
「ベートなら知っとるやろ、フレイヤとシルちゃんの噂」
「だから言ってんだろうが」
「せや。でも証拠がない」
「………………」
「それにあそこはミア母ちゃんのテリトリー。意味、わかるな?」
「クソが」
ベートが不機嫌そうに出ていく。
ロキがさいごのページを捲った時だった。
パサ、と一枚の紙が落ちた。
「なんやこれ」
ロキが手に取った紙に書かれていたのは、ヒエログリフ。
<モンスターフィリアの件、貴方が疑っていたから取り敢えずこれを贈るわ。
機嫌を直してちょうだい。
追伸。今度あの子とデートさせてもらうわ>
「チッ…そういう事かいな」
「どうしたんじゃロキ?」
「あの色ボケがぁ…!」
「もらうぞ」
リヴェリアが紙を奪う。
「つまり、グリモアをくれてやるからデートさせろ、という事か」
リヴェリアの呟きにロキが苦い顔をする。
「うーん…ベルなら逆にフレイヤをたらしこんだりしてね」
「笑い事ちゃうぞフィン。ベルがフレイヤを落としてみぃ。あの色ボケと戦争やぞ」
「ベルが悲しむとでも言えばいい」
「なんでそないな楽観的なんや…」
「はは、僕もベルに惚れ込んだ一人だからね」
「掘るなよ」
「そういう意味じゃないよ」
ガレスが紙を手に取る。
「さっぱりわからん」
「そらそうやろ。フィンでも読めん代物や」
ガレスから紙を受け取るロキ。
「どうする。あの色ボケ対策にアイズかベートでも張り付けるか?」
「それならアイズを着けよう。遠征も近いし、ベルと一緒に大人しくしててもらおうか」
「ではアイズとベルを呼び………あ」
「どうしたんじゃいリヴェリア」
「ベル、今日はオラリオを見て回ると言っていたような…」
「「「「……………………」」」」
沈黙。
「だ、大丈夫やろ。昨日の今日やで?」
「「「……………ベルだし」」」
「ベルへの信頼すごいな…。まぁ、ええわ。リヴェリア、アイズに伝えときぃ」
「ああ。そうしておこう」
同日夜
「あ、リヴェリアさん。今日凄く綺麗な女神様と会ったんですよ。」
「ほ、ほう。その女神の名は?」
「えっと…フラウ様って言ってました」
「遅かったか!?」
リヴェリアがベルの肩を掴む。
「ぴぃっ!?」
「ベル。その女神とどこで会い何をしたか全て話せ。いいな?」
「は、はい…」
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