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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百六話 イギリス風メイドその五

「日本は凄くいいってね」
「言っておられるのね」
「あの先生すっかり日本好きになってるから」
「来日されてから」
「日本の味に夢中にもなってて」
「紅茶も日本の方がいい、なのね」
「そう言っておられるわ」
 実際にというのだ。
「ティーセットもね」
「成程ね」
「まあ日本の味は」
 ここで僕は言った。
「薄口でも評判がいいことはね」
「確かよね」
「その通りよね」
「うん、ただね」
「ただ?」
「ただっていうと」
「いや、日本人って誉められると」
 ドリトル先生みたいに絶賛されるとだ、僕は二人に苦笑いで話した。
「恥ずかしくなるんだよね」
「シャイね」
 テレサさんは僕の今の言葉にすぐに言い返してきた。
「そこは」
「どうもね、それはね」
「誉められると恥ずかしいの」
「そうなんだよね」
「何ていうかね」
「何ていうか?」
「そこでシャイになるのがね」
 それはというと。
「日本人の困ったところね」
「短所なんだ」
「短所じゃないけれどもっと受け入れてね」
「褒められたら」
「それでいいと思うけれど」
「いや、それがね」
 日本人としてはだ、中にはそうでない人がいるにしても国民性としてそんな風だと思う。
「何か誉められると恥ずかしいよ」
「けれど駄目出しされるよりましでしょ」
「かと思ったら昔の知識人とかね」
 今もいることにはいるがだ。
「何でもかんでも日本は駄目とか言う人いたから」
「そんな人普通嫌われるでしょ」
「出す本全部ベストセラーだったよ」
「日本の中で」
「そう、日本人が読んでもね」
 それでもだ。
「人気があったんだ」
「フィリピンじゃ無茶苦茶嫌われそうね」
「それメキシコもよ」
 モンセラさんも言ってきた。
「無闇やたらにメキシコの悪口ばかり言ったら」
「嫌われるわよね」
「そんなにメキシコが嫌いなら出て行け」
「そうなるわよ、フィリピンから」
 テレサさんもこう応えた。
「出て行って大好きな国で暮らせば」
「その国の人になってね」
「そうなるけれど」
 それが普通だとだ、二人は僕の目の前で話した。
「何で日本ではよかったのか」
「不思議よね」
「批判精神っていうか」
 この言葉は丸山眞男とかいう学者からはじまったとか聞いている、正直聞いたこともない名前の学者だ。
「それがあるってね」
「言われてなの」
「それでなの」
「それがいいって言われていたんだ」
 日本を批判することがだ、知識人として正しい姿とされていたという。
「もう誉めないでね、あげつらってでもね」
「日本を駄目って言う」
「それがいいって言われていたの」
「そうらしいんだよね」
 誰かに聞いた話ではだ。
「昔は」
「いや、駄目なところは駄目って言っても」
「無闇やたらに言いまくるのはね」
「どう見てもおかしいから」
「そうした人ってすぐにわかるしね」
「うん、全否定して何でも駄目出しする人は」
 日本のことでも何に対してもだ。 
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